2018 Fiscal Year Research-status Report
A research on Neoliberal policy in the finance-led regime
Project/Area Number |
17K03651
|
Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
内藤 敦之 大月短期大学, 経済科, 教授 (40461868)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 金融化 / ネオ・リベラリズム / 認知資本主義 / 生政治 / マクロ・レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は基本的な文献のサーベイを引き続き行った。第一に金融化論の政策論及び金融化の進展プロセスのサーベイを行い、金融化論の枠組におけるネオ・リベラリズム政策の位置付けを検討し、特に金融化を促進させた政策について分析を行った。第二にマクロ経済レジーム論のサーベイを行い、金融主導型レジームにおける政策の役割の特徴と問題点について検討した。ここでは金融主導型レジームの不安定性と政策の関係を中心に考察した。第三に認知資本主義論においては、フーコーの生政治論やネグリのマルチチュード論に基づいて、労働や金融についての分析を行っている。ここではネオ・リベラリズム的政策を生政治論から検討し、金融化との関係を考察した。第四にネオ・リベラリズム論の理論的構成と政策の位置付けを検討し、政策の持つ意味を分析した。また、政策の思想的背景に関してもサーベイを行い、実際の政策との関係を考察した。第五にネオ・リベラリズム政策の実態とその影響に関する簡単な実証分析を行うために準備として、先進国のマクロ経済データの整理を行った。成果としては第一に書評ではあるが「J. Halevi, G. C. Harcourt, P. Kriesler, and J. W. Nevile, Post-Keynesian Essays from Down Under: Theory and Policy in an Historical Context (4 vols., 2016) をめぐって」(『経済学史研究』第60巻第1号、2018年7月)においてネオ・リベラリズム政策に触れている点には検討を加えた。第二に「貨幣の名目性:表券主義の貨幣理論」(『季刊経済理論』第55巻第4号、2019年1月)においてはネオ・リベラリズムに反対する政策としても位置付け可能なModern Money Theoryについて検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は文献のサーベイを中心に進める計画であったが、サーベイに関しては順調に進んでいる。特に、フーコーに関しては『生政治の誕生』と『監獄の誕生』だけでなく、その間の著作や講義録を中心に、フーコーがネオ・リベラリズムだけでなく、経済に対してどのような考えを抱いていたのかを検討した。この点は、生前に交換された著作だけでは分からないギャップでもあるため、講義録の分析を通じ、考察することが必要である。また、ネオ・リベラリズム政策に関しても検討が進んでいる。成果としては、書評ではあるが、ネオ・リベラリズム政策への批判に関してはある程度の分析を行った。また、現代貨幣理論(Modern Money Theory)に関する論文も発表したが、同じテーマで学会報告も行ったが、そこではネオ・リベラリズムに対抗する政策論としても検討を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究の目標を達成すべく、理論的、経済思想史的な検討を中心に作業を進める。第一に、金融化論におけるネオ・リベラリズム政策の位置付けを明確化し、あらためて金融化の過程の分析へと統合する。第二に、マクロ経済レジーム論に関しては金融主導型レジームをベースに、ネオ・リベラリズム政策を統合したレジームを検討し、提示する。第三に、認知資本主義論におけるネオ・リベラリズム分析に基づいて政策について検討する。また、フーコーのNaissance de la biopolitique (2004)の先駆的なネオ・リベ ラリズムの検討をもとに、経済統治の体系として、ネオ・リベラリズム政策の位置 付けを試み、その基盤となる思想と政策について考察する。第四に、ネオ・リベラリズム政策の内容とその結果を簡単な実証分析も用いて明らかにする。第五に、ネオ・リベラリズム政策の金融主導型レジームにおける位置付けを基礎として、その意義を考察する。また、それを踏まえた上で、その背景となる思想及び、実際の政策とその結果との乖離についても検討する。というのは、ネオ・リベラリズムの場合は政策理念的なものと実際の政策との乖離が大きいからである。その上で政策思想としての意義をレトリックという観点も意識しつつ分析する。 成果の発表に関しては、第一に、ネオ・リベラリズムにおける政策の概要と役割についての検討を主題とした報告を国内の学会、研究会等で行う。第二に、金融主導型レジームにおけるネオ・リベラリズム政策の位置付けの検討を主題として国内の学会、研究会で報告を行う。報告後、原稿を修正し、学会誌へ投稿する。第三に、認知資本主義論の枠組に基づいて、 フーコーの生政治概念等を用いて、ネオ・リベラリズム政策の背景を分析することを主題として、国内の学会、研究会等で報告を行う。
|
Research Products
(3 results)