2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03660
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
早川 和彦 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (00508161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共分散構造分析 / パネルデータ / 内生性 / GMM |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)パネルデータを用いた自己共分散関数の推定と、(2)最小距離推定量を用いたパネルデータモデルの推定を考察した。 (1)に関して、時系列分析ではデータの従属性の強さを測る方法として、自己共分散関数がよく使われる。しかしながら、パネルデータの場合、個別効果が存在するため、自己共分散関数を計算する前に、時間平均からの偏差を取ることで、データに含まれる個別効果を除去する必要がある。しかし、このデータ変換が新たな問題を引き起こすことが知られている。その中で特に問題となるのは、自己共分散関数が一致性を持つためには、パネルデータの時間の長さTが大きくなる必要があるという点である。しかしながら、多くの(ミクロ)パネルデータはそれほど長くないため、自己共分散関数では、正確にデータの従属性を計測することができない。この問題を解決するために、比較的一般的な従属構造を許す新しいモデルを提案した。提案されたモデルは、ARモデル・MAモデル・ARMAモデルを特殊ケースとして含むモデルであるが、ラグ次数を指定する必要がないため、ラグ次数の選択ミスに対して頑健であるという優れた特徴を持つ。モンテカルロ実験を行い、提案された手法は優れたパフォーマンスを持つことを確認した。
(2)に関して、昨年度の時点では、標準的な動学的パネルデータモデルの推定を考えていたが、今年度はモデルをさらに拡張した。具体的には、説明変数のラグ変数をモデルに含められるように拡張し、さらに誤差項が系列相関を持つ場合を考察した。モンテカルロ実験の結果から、提案した推定量は既存の推定量よりもパフォーマンスが良いことを確認した。また、提案した手法の応用例として、生産関数の推定を考えているため、関連する研究のサーベイを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主要な理論結果、シミュレーション結果はほとんど得られており、その部分については論文としてすでにまとめてある。しかし、モンテカルロ実験に予想以上の時間がかかったため、応用例の分析までは進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
提案した手法の応用例を考察し、分析が終わり次第、査読付き雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、数値最適化を伴う新しい統計手法の開発を行っているが、実際に数値実験をしたところ、当初の想定よりも計算時間がかなり長くなることが分かった。特にデータ数が大きいときには計算時間がかなり長くなるため、数値実験をすべて実施することができなかった。その原因は、計算に使用しているパソコンが古い(2013年製)ことである。そのため、今年度、最新のパソコンを購入し、数値実験を終了させ、査読付き雑誌の論文を投稿する。
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