2017 Fiscal Year Research-status Report
時間使用データの組成データ分析と主観的幸福に関する実証分析
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17K03668
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
上田 和宏 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (50203435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (30189534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活時間 / 時間使用データ / ベイジアン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29度は,結婚している夫婦について個人の生活時間と性別,所得や学歴など,その人の属性と時間使用との関係について実証分析を行った.結果は,ディスカッションペーパー(Hikaru Hasegawa and Kazuhiro Ueda “Time Use of Married Couples: Bayesian approach,” Discussion Paper, Series A, No.2017-309, 2017 Aug. Hokkaido University)にまとめた.現在,改訂を行い海外の雑誌への投稿作業を行っている. 本論文では,家計経済研究所による「消費生活に関するパネルデータ」を用いて,婚姻状況にある夫婦の活動時間(通勤・仕事・家事・学習・余暇・その他)と性別や妻及び夫の所得や学歴などとの関係を調べた.われわれは,妻と夫それぞれの生活時間における通勤や仕事などの活動時間の間の相関だけでなく,妻と夫のそれらの活動時間の間にも相関があることを見出し,これら2種類の相関を考慮して実証分析を行った.また,時間使用データは,組成データ(1日は24時間なのですべての活動時間の割合の合計は1になる)と呼ばれる特徴を持つだけでなく,誰もが1日にすべての活動を行うわけではないので,ゼロを多く含むるという特徴を持つ.こうしたデータを用いる実証分析には注意が必要であることが知られているため,われわれはベイジアンの統計手法を用いて実証分析を行った. われわれは,さらに時間使用の視点から主観的幸福を考えるため,個人の生活時間のゆとりを測ることにつながる時間貧困(time poverty)の実証分析を行う準備に着手した.先行研究の調査.また,個人の時間使用についてより詳細に調査が行われている社会生活基本調査のデータの利用可能性および試行モデルの検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれは,交付申請書で今年度の実施計画として,「個人の時間の使い方と主観的幸福度に関する分析の準備として,個人の時間の使い方と所得や就業・雇用状態など経済的状況,性別や婚姻状況,教育水準など社会人口的属性との関係分析を行う.また,貧困や不平等などとの関係について分析を行う.そのため,先行研究を分析し,実証モデルを構築する.」としていた. これに対して,われわれは「研究実績の概要」に記したように個人の時間の使い方についての実証論文を作成し,ディスカッションペーパーとしてまとめた.また,時間使用データを実証分析で利用する際に問題となる点について,ベイジアンの手法による克服を提起した.さらに,時間使用の視点から「時間貧困」という概念について実証分析を行うため,先行研究の調査を行ってメモとしてまとめている.さらに,その実証分析を行うための試行モデルを検討している. こうした点から,現在までの進捗状況は「おおむね順調に進捗している」と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については,海外では時間貧困(time poverty)として実証研究が行われている問題について,日本における時間使用の詳細なデータを用いて実証する方向で研究を進めている.先行研究で取り上げられている海外の場合と日本とでは生活スタイルが異なるが,日本においても働き方や家事・育児などの負担に関する問題が顕在化しているため,日本的な視点から時間貧困について分析することを考えている.すでに先行研究の整理については整理を進めているので,今後はデータの取得,整理,また実証手法の検討などを研究分担者とともに進めていくことになる.
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Causes of Carryover |
研究分担者の使用残額が2404円と少額となったため必要な下記の洋書の購入には不足した.そのため,次年度の交付金と合わせて使用することとした. タイトル:Ordinal Data Modeling (Statistics for Social and Behavioral Sciences) 価格:11481円. 成果は学術雑誌に投稿を予定している.
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Remarks |
作成したディスカッションペーパーは,以下の通りです. Hikaru Hasegawa and Kazuhiro Ueda “Time Use of Married Couples: Bayesian approach,” Discussion Paper, Series A, No.2017-309, 2017 Aug. Hokkaido University.
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