2018 Fiscal Year Research-status Report
時間使用データの組成データ分析と主観的幸福に関する実証分析
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17K03668
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
上田 和宏 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (50203435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (30189534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 女性の生活時間 / 組成データ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,前年度に作成した時間使用データを用いた実証分析のための試行モデルを用いて女性の生活時間の決定要因に関する分析を行った.推定結果は,われわれが既に行った別のデータベースを用いて行った研究と比較検討し,論文とする作業を行っている.また,前年度にDiscussion Paperとしてまとめた働く既婚女性の生活時間に関する分析の論文の改善を図り,洋雑誌に投稿したところ,年度内にほぼ洋雑誌に受理される見込みを得た. 今年度の研究では,総務省統計局の『社会生活基本調査』のデータを利用するため,独立行政法人統計センターより匿名データの提供を受けた.同調査は,国民の生活実態を生活時間の側面において詳細に調査していて標本数も多い.1日の様々な活動時間の合計は一定(24時間)であり,しかも各個人が1日に必ずしもすべての活動を行うわけではないため,生活時間データはゼロを含む組成データである.本研究ではそうしたデータを用いて実証分析を行う方法を検討することが課題であるが,われわれはLeininger (2013)を参考にしたモデルをBayes法で推定した. われわれは,(旧)家計経済研究所の『消費生活に関するパネル調査』を用いて既婚の働く女性の生活時間に関する分析を行っていたので,その結果と今回の推定結果を比較検討した.両分析を通して乳幼児の有無が,女性の仕事時間に負の効果を及ぼし,家事・育児時間に正の効果を及ぼすこと,また,所得は通勤・通学時間や仕事時間に正の効果を及ぼすことなどは共通していた.日本における女性の家事育児負担の偏りはこれまでも主張されてきたことであるが,われわれの複数のデータによる分析でも同様の結果が得られた.また,所得を得るためには,長時間の通勤や労働が伴うことを意味する結果も得られ,日本社会の一面が統計的にも明らかとなったと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,生活時間のデータはゼロを含む組成データであるため,その実証分析の手法を検討することが一つの課題であるが,これについてはLeininger (2013) によるモデルをBayes法で推定することで対処できるようになっている.また,主観的幸福を生活時間ベースから捉えるため,生活時間について詳細に調査を行っている『社会生活基本調査』の匿名データを整理して分析に必要なデータベースの作成を行い,女性の生活時間についての実証分析を行い,論文としてまとめている.こうした点からおおむね進捗状況は順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は研究最終年となるので,残っている課題に取り組み研究全般のまとめとなるような論文の作成を目指す.引き続き『社会生活基本調査』などのミクロの生活時間のデータを利用して,時間使用という観点から主観的幸福感に関係する貧困や不平等という問題を分析し,その結果が所得など経済的豊かさの観点からの分析で得られた知見とどのような関係にあるのかを検討する. 分析結果については,論文にまとめて洋雑誌に投稿する.
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