2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative evaluations of fiscal and monetary policies effects in the US and Japan based on DSGE model
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17K03671
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
松前 龍宜 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40780888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DSGEモデル / 景気循環 / 経済政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium; 以下,DSGE)モデルを理論・計量の両面から拡張しつつ主として以下の2つの研究プロジェクトを遂行した.第一のプロジェクトでは,失われた10年とも呼ばれる日本経済において,財政出動がどのようなチャネルを通じて失業を改善したのかを定量的に明らかにした.第二のプロジェクトでは,1990年代初頭の日本経済における資産価格バブルの崩壊,および2008年のリーマン・ショックに端を発する米国経済の金融危機において,銀行・企業のバランスシート棄損という金融ショックが,投資や産出といった米国の実体経済をどれほど悪化させ,危機後の金融・財政政策がどれほど景気の下支えに寄与したかを定量的に評価した. 失業率の悪化に対して財政当局にどれほどの財政出動が求められるのか,金融危機前のGDP水準に復帰するには金融当局に何%の金融緩和が必要なのかといった具体的な政策的インプリケーションが得られることが本研究プロジェクトの意義である. 上記の研究プロジェクトのうち,日本の資産価格バブル期における金融市場の不完全性がもたらした実体経済への影響を定量評価した研究は2019年に国際ジャーナルから公刊された.金融摩擦を組み込んだDSGEモデルによって,投資・消費・インフレといったマクロ経済指標の予測精度が上昇するか否かを,日本経済を対象に検証した.バブル期や失われた10年を含む金融危機の時期に焦点を当てると,金融摩擦モデルはサンプル全期間に渡って投資の予測精度を改善した.一方で,消費とインフレの予測精度は,政策金利と企業の借入金利スプレッドの変動に依存し,特に急激な金融政策の変更は,金融摩擦モデルの予測パフォーマンスを低下させる可能性があることがわかった.
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