2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00361577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バンドリング / 競争促進効果 / 競争制限効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、バンドリングが市場競争にもらたす影響を理論的・定量的に評価することを目的にする。バンドリングとは、異なる複数の財・サービスを一括して販売することを指す。バンドリングは、原則的には競争促進的と考えられるものの、態様によっては一商品のみを販売する事業者の参入や事業拡大が阻害される懼れがあるなど、競争制限的な効果に繋がり得ることが理論的に知られている。平成30年度は、バンドリングの一つの形態を航空産業に求め、その定量的な分析を行った。企業合併を外生的なショックと取り扱うことができる点を実証的に検証したうえで、合併が、航空企業のおける複数路線のバンドリング戦略に与えた影響を価格および品質面から構造モデルを踏まえた定量的な分析によって解明をした。合併前後における市場構造(独占路線か複占・寡占路線か)によってバンドリング戦略の効果が異なる点が明らかになった。個別産業としては、更に電力について焦点をあて、再生可能エネルギーが化石電源と共に販売をされている場合に、再生可能エネルギーが普及するためにどのような政策的な対応(政策が不要という場合も含む)が望まれるかを定量的に分析した。再生可能エネルギーがもたらす環境的な正の外部性などを勘案すると、政策的対応が望ましいものの、原稿わが国が行っているFIT(固定価格買取制度)は、過剰な政策介入である可能性があることも指摘された。更に、平成29年度におこなったデジタル・カルテルの議論をSociety 5.0の観点から取りまとめ、公刊するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バンドリングに関して、(1)市場競争に対する影響をnormativeとpositiveの観点から取りまとめ、デジタル・プラットフォーム事業者に対する行動に対して一点の分析視座と政策的対応を取りまとめることができた点、(2)個別産業における市場競争への影響について、特に航空産業に注目した定量的な分析を行い、平成30年度に目標としていた個別産業のモデル化と定量化に向けての研究の取りまとめの1つを仕上げることができ、一定程度の目標の達成をみることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度である平成31年度(令和1年)においては、電力産業に焦点をあてた分析を取り組むことを目的にする。平成30年度において得た需要家における電力消費データを用いることで、需要家行動における行動経済学的な視点を盛り込みながら、需要家の選択行動から電力の価値(停電価値、VOLL)を顕示選好データから識別する試みを行うことを目的にする。電力と通信などの他の商財とのバンドリングが見られつつある中で、VOLLを推定することはバンドリングの需要側からの知見を深めるうえで、重要である。通常の文献で用いられてきた粒度よりもきめの細かい時間帯別のデータから、新たな需要家行動の切り口を明らかにし、バンドリングに関する新たな知見が得られればと考えている。
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Causes of Carryover |
個別産業のうち、電力産業のバンドリングにかかるデータの入手時期が当初の見込みから大きくずれ込んでしまったために、当該年度において所要額が未達であった。しかし、データの入手が平成30年度末までに完了したことから、平成31年度(令和1年)においてデータ解析を行い、電力におけるバンドリングについてVOLLの観点から知見を得るために、次年度である平成31年度において研究費を使用することとし、使用計画を作成した。
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Research Products
(12 results)