2017 Fiscal Year Research-status Report
輸送ハブ形成メカニズムの解明-東アジアの空港・港湾間競争と我が国への政策提言-
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17K03688
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 秀暢 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70294262)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際航空流動 / ハブ効果 / 重力モデル / アジア地域 / 産業集積 / 集積の経済 / 国際情報交換(オーストラリア) / 国際情報交換(ベルギー) |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成29年度(1年目))は、本研究課題の基礎研究および現状分析と位置付けた上で、主に、以下の2つの研究課題に取り組んだ。
1. 【基礎的データ・ベースの構築(基礎研究)】①都市間国際航空旅客・貨物流動量データ、②港湾間国際コンテナ貨物流動量データ、③企業管理機能集積データ、そして④輸送産業集積データを収集・加工して、本研究課題を遂行するために必要な基礎的データ・ベースを構築した。その際には、①はICAOデータ、②は国際輸送ハンドブック、③はベルギー人/オーストラリア人研究協力者からの提供、そして④は工業統計調査(経済産業省)を利用した。 2. 【都市間国際航空旅客・貨物流動の分析(現状分析1)】アジア地域を分析対象として取り上げ、重力モデルによって、国際航空輸送からみたアジア主要都市の拠点性(ハブ効果)を検証した。その結果、中国本土の3都市に加えて、特に貨物に関しては、クアラルンプール、ソウル、ジャカルタ、バンコクをはじめ、第2階層都市が急速に成長していると判断できた。そして、旅客および貨物ともに、新空港を開港した都市、貨物については、3大インテグレーターが貨物ハブを開設した都市の拠点性は、基本的に上昇していることが明らかとなった。 3. 【航空機部品産業と海事産業の空間的集積の検証(現状分析2)】我が国における航空機部品産業と海事産業の製造部門を分析対象として取り上げ、その空間的集積の現状を把握した。まず、航空機部品産業については、特化係数による分析からは、中部地域と東京都多摩地域に集積していることが観察された。次に、海事製造業に関しては、瀬戸内海沿岸と九州北部が、我が国において最も海事関連産業が集積した地域であると判断できた。同時に、工業地区を分析対象とした特化係数を用いた分析からも、瀬戸内海沿岸や九州北部の工業地区において、特化係数が高いことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(平成29年度(1年目))においては、合計10編(有審査英文ジャーナル論文1編(Impact Factor:2.357)、有審査和文ジャーナル論文3編、国際学会プロシーディングス論文5編(うち、フルペーパー審査3編、アブストラクト審査2編)、そして招待論文1編)の論文を対外的に公表し、併せて、日本海運経済学会からは、国際交流賞を受賞した。このことは、本研究成果が、国際的にも高く評価された証左であるといえるだろう。
以上の理由から、本研究課題の現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成29年度(1年目))の研究成果を踏まえた上で、まず、次年度(平成30年度(2年目))においては、企業管理機能・輸送産業の集積と集積の経済効果の検証を行い(事例検証)、そして、輸送ハブと都市成長に関する実証分析に取り組む(実証研究)。次に、次々年度(平成31年度(3年目))においては、輸送ハブ形成メカニズムを内生化した学際的モデルの開発に取り組み(理論研究)、最終的には、日本の国際空港・港湾政策に対する戦略的提言(政策提言)を行う予定である。
本研究課題を上記の推進方策に従って取り組むために、今後は、特に、オーストラリア人、ベルギー人、そしてオランダ人研究者との綿密な協力関係の下で取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度(平成30年度(2年目))の分析を遂行する上で、国際機関(ICAO)から相当額のデータを購入する必要が生じたため、本年度(平成29年度(1年目))の配分額と合算して使用することとしたため。
(使用計画)上記の通り、分析に必要不可欠なデータを購入し、次年度(平成30年度(2年目))以降、本研究課題を着実に遂行する。
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