2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03698
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森脇 祥太 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00349200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 政行 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (60546133)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 製糸業 / 技術選択 / 技術導入 / 明治前期 / 岐阜県 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はここまで、昨年度の東アジア諸国を対象としてマクロデータを使用した分析から、発展途上国であった時期の明治前期日本を対象としてミクロデータを使用した分析へと研究を進化させてきた。1880年代前半の岐阜製糸業を対象として、水車や人力等、化石エネルギーに動力源を依存しない成長の特性についての計量分析を行った。研究の成果は、2018年度中に国際誌へ掲載され、昨年度に引き続き、一応の成果を挙げることが出来た。 明治前期に日本は、フランスやイタリアといった欧州諸国から最先端の製糸技術を導入し、江戸期以降品種改良が持続的に行われた養蚕業の発展と合わせて、外貨獲得産業としての蚕糸業を確立した。その確立過程においては、最先端の製糸技術をそのままの形で受け入れることなく、日本の市場条件に適合する形に修正した導入が図られた。 その導入に際しては、労働集約的な技術選択が行われる一方、主たる女性労働力と合わせて補助的に男性労働力が有効に活用された。また製糸組合の結成が行われ、地域の中で連携して共同出荷や原材料購入が行われた。地域の中で多くの製糸工場が成立し、競争が行われ、原材料たる繭の生産が活発に行われた。さらに、動力源としては水車、繭を煮る燃料源としては蒸気力が使用され、効率性を高めることとなった。 以上のような要因は、先行研究とは異なり、システムGMMによる生産関数の推定によって、厳密に確認され、技術進歩に貢献することが明らかとなった。さらに、フロンティア効率性の推定も同時に行われ、岐阜県の中の美濃・飛騨のそれぞれにおいて、技術的効率性に格差が存在せず、修正技術の伝播に地域格差が存在しないことが確認された。来年度は、山梨県にまで対象地域を拡大し、より詳細なデータを使用した生産関数の推定を行い、製糸業の技術導入の確立期の状況をさらに明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は農業の廃棄物排出に関する国際比較を行ったが、今年度は農業由来の産業に注目し、発展途上国期の日本の経験を確認することで、教訓を引き出すアプローチを選択した。動力源に化石エネルギーを使用せず、相対的に汚染度の低い段階の経済発展に必要な条件を確認することを目的とした。実証研究の結果は、地域研究が対象の国際誌に掲載され、一定の成果は出せたと判断されうる。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロデータを使用した分析を行うことを優先し、製糸業の研究をさらに深めて行い、その後、動力源に化石燃料を使用する綿工業に分析の焦点を移す予定である。いずれも、データが入手可能である明治期日本を対象とする。 研究分担者との共同研究として、今年度、中国の地域データを使用した環境クズネッツ曲線の推定を農業及び工業のそれぞれの部門を対象に行う予定である。 これらの研究は、今年度、引き続き、査読付きの国際雑誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
データ取得のための費用が公刊統計の使用によって削減されたこと及びデータ取得や打合せのための出張が、予想よりも少ない回数となったことが原因である。
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