2018 Fiscal Year Research-status Report
開発における桎梏:ジェンダー問題における社会規範と人々の主観
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17K03700
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
和田 一哉 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (70589259)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育投資 / 期待形成 / 社会規範 / 主観 / グローバル化 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケニアとインドの農村におけるジェンダー問題を事例に、現地の社会規範と人々が個々に有する主観に注目し、それが将来の途上国開発にいかなる影響をもたらすかについて検証するものである。社会規範や個々の主観は、期待形成等を通じて開発にきわめて重要な影響を有する可能性があるが、国によって、社会経済状況によって、その意義は一律でない。この点について定量的に明らかにするのが本研究の試みである。社会規範と個々の主観との間には相互作用が生じうる点に注意が必要である。すなわち、この二つはそれぞれ時に開発を妨げ、時に促進することがありうる、という点である。2年目となる2018年度は、アジア政経学会にて「土地所有、教育投資、貧困削減:インドの家計データを用いた実証分析」を、Institute for Social and Economic Change(インド)にて"Changes in Landholdings and Household Welfare in Rural India"をそれぞれ発表した。いずれも人々の主観の影響を定量的に把握することを主眼としたもので、発表を通じて得たフィードバックにより、今後さらなる精緻化を図る予定である。またディスカッションペーパーとして"Landholdings, Occupation, and Investments in Education in Rural India: A Field Survey in Appadurai Village, Tiruchirapalli District, Tamil Nadu"を発表した。これに関してはデータの質の問題から人々の主観を取り扱うことはできなかったが、今後社会規範の観点からさらに分析を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インド農村における現地調査に加え、家計データを補完するデータの整理を進めつつ、これまでに取得したデータを用いて実証論文を刊行した。インドのタミル・ナードゥ州の一村で独自に取得した家計データを用いた論文として、"Landholdings, Occupation, and Investments in Education in Rural India: A Field Survey in Appadurai Village, Tiruchirapalli District, Tamil Nadu"を執筆した。また大規模家計データを用いた実証研究に関しては、国内ではアジア政経学会にて「土地所有、教育投資、貧困削減:インドの家計データを用いた実証分析」を、南アジア学会のセミナーにて「経済発展、教育、女性のエンパワーメント」を、また海外ではインドのInstitute for Social and Economic Changeのセミナーにて「Changes in Landholdings and Household Welfare in Rural India」の研究報告を行い、そこで得たフィードバックを改訂作業に活用し、分析・執筆作業を進めている。以上のような状況から、全体としておおむね順調に進展している状況にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
インドの家計データを用いた実証分析に関しては、既存データであるNational Family Health SurveysとIndia Human Development Studyを用いた論文の執筆をそれぞれ現在進めているところである。また独自に取得したデータに関してはすでにディスカッションペーパーを発表しているが、これをさらに精緻化する予定である。必要に応じて現地調査を行い、これを補完することとしている。ケニアの家計データを用いた研究に関しては、インド関連の作業に集中したこともあり進められなかったが、独自に取得したデータの整理はすでに終了しているため、実証分析を実施し、論文刊行へと進める予定である。いずれも2019年度秋に国内外で予定されている学会・研究会にて研究発表を実施する。
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Causes of Carryover |
最終年度に数本の論文発表を予定しており、英文校正費用を相当程度要すると見込まれることから、それを考慮した予算支出を実施することとした。当初計画では現地調査を見込んでの支出配分を予定していたが、おおむねデータ整理が順調であるため、柔軟に対処できると判断した。
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