2019 Fiscal Year Research-status Report
市場変動が企業の国際化に与える影響に関するミクロ実証分析
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17K03705
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 萬里 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 鮎夢 中央大学, 商学部, 准教授 (20583967)
白井 克典 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (90547225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロデータ / 企業の国際化 / 市場変動 / 貿易ショック / 保護主義 / ミクロ計量経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目にあたる令和元年度は、主にこれまで取り組んだ実証分析の成果を学術論文にとりまとめ、成果の普及や内容の更新に主に取り組んだ。第一に、国際化企業が外国市場の急激な市場変動にどのような対応をするのかに関して、企業レベルのデータベースを利用して取り組んだ実証分析の内容を学術論文にとりまとめた。この論文は、海外市場のショックに対して日本企業が雇用調整で応じた実態を明らかにしたもので、特に雇用者を正規雇用と非正規雇用とに分けた分析から、企業が非正規雇用者を削減することでショックの影響を吸収していることが示された。さらに、この影響は企業規模に応じて異なり、小規模企業については非正規雇用に限らず正規雇用の減少も確認された。国際市場の変動に対して規模が小さい企業ほど雇用調整に踏み切らざるを得ない実態が示唆され、ショックに対する復元性の強い経済を考える上で基礎資料を提示している。次に、国際市場の変動ショックとして輸入ショックが国内の政策形成に与える影響について実証分析した内容を学術論文に取りまとめた。輸入の増加は特に世界金融危機や東日本大震災以降に顕著に観察され、この間の国政選挙の立候補者の貿易政策の選好に与える影響に関して実証分析を試みた。衆参の選挙区レベルで貿易ショックと保護主義の関係性について実証分析した結果、衆議院ほど輸入ショックによる保護主義への傾倒が顕著であること、現職よりも非現職者が特に輸入ショックによる保護主義的な影響を受けることが統計的に有意に確認された。保護主義の台頭は貿易ショックだけでなく選挙に関する要因も相互に関連し、引き起こされることを示唆しており、輸入の拡大と選挙時の保護主義への傾倒が近年顕著に見られる先進諸国の実態と整合的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで得られた研究成果については複数の学術論文としてとりまとめ、国内外の学会等にて口頭発表を重ね更新を加えた後、査読付きの海外専門誌へ投稿したが、一部の成果については査読プロセスに想定以上に時間を要している。主な原因としては、注目している要因である市場変動にかかわる変数の内生性の問題や、推計結果の頑健性の検証が不十分であるという指摘であり、当初の計画に加え新たに複数の分析手法を用いて実証分析の拡充を施した。また、年度末の3月に研究成果を報告する機会として、共同研究者の他、国内外の研究者を本務先に複数招いて研究報告会を開催する予定であったが、Covid-19による影響を受けて延期せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
査読付きの海外専門誌へ投稿中の研究成果について引き続き査読プロセスに対応し、必要に応じて論文の更新を施していく。査読プロセスにおいて指摘を受けた内生性の問題に関してはすでに対処方針が定まり、必要な追加データが揃い次第分析を加える。査読プロセスへの対応と併行して、研究成果の普及・発信についても研究者のウェブサイトやその他の媒体を通じて機会を捉え積極的に実施していく。開催が延期となった研究成果の報告会については、Covid-19が収束次第、実現可能性について検討する。必要に応じて遠隔オンラインでの実施が可能か検討し、期間内に研究成果について他の専門家からの学術的な貢献について客観的な評価を受ける。
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Causes of Carryover |
当該年度の年度末3月にこれまで得た研究成果を報告する機会として、共同研究者の他、国内外の研究者を本務先に複数招いて研究報告会を開催する予定であったが、Covid-19による影響を受けて延期せざるを得なかった。このため成果報告会開催の費用が未使用額となった。成果報告会については次年度にあらためて開催を検討し、主に研究者の招聘あるいは研究報告のための出張旅費として使用を計画している。
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Research Products
(5 results)