2017 Fiscal Year Research-status Report
Trade Poilcy and Endogenous Choice of Product Characteristics
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17K03706
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
椋 寛 学習院大学, 経済学部, 教授 (90365065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森谷 徳純 中央大学, 経済学部, 准教授 (40548088)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 製品差別化 / 地域貿易協定 / 移転価格税制 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度は、製品特性の内生的選択をどのように扱うかについて、適切なモデルを検討するため,研究代表者・研究分担者とも先行研究のサーベイと実際の製品差別化の事例研究を行った。特に、Brander and Spencer (2015)によるモデルの定式化の妥当性と応用可能性について検討を行った。
研究代表者はFTAやCUの締結による域内国の域外関税や域外国の関税の決定が、企業の製品差別化戦略を考慮することによりどのような影響を受けるのかを理論的に分析した。特に、域内企業と域外企業間の水平的製品差別化に注目し、Brander and Spencer (2015)を応用しつつ、理論モデルを構築した。分析の結果、FTAやCUの締結が製品差別化の程度を下げ、特にCUでより差別化の程度の下がり方が大きくなることが明らかにされた。その結果、企業間の競争は高まり、域外国の関税率が上昇する。結果的に、域内国の厚生はCUよりもFTAで高まり、かつ域内国が関税率を内生的に決定したとしても、FTAの締結が域外国の厚生を悪化させるケースがあることが明らかになった。この結果は、従来得られていた結果と異なり、各国が何故域内国が協力的に関税率を設定するCUではなく、独自に関税率を設定するFTAを選択するのかを説明しており、政策含意が大きい。
研究分担者は、移転価格税制は多国籍企業の立地にも影響を与えるため,同税制を広い意味での貿易政策ととらえ,製品特性の内生的選択を考慮することで移転価格税制に関する既存研究の結果がどう変わりうるかを探求することに従事した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の検討は当初の計画通り順調に行われたものの、全体としては概ねサーベイにとどまっており,新しい理論分析を十分に行えていない点は不十分である。しかし,製品特性の内生的選択をどのように扱うかは本研究にとっては非常に重要な点であり,それを避けることはできない。
一方、初年度に集中的に取り組むことが計画されたFTAとCUと製品差別化の関係について、一定の成果を得ることが出来ており、特に既存の研究と異なる分析結果を複数導いた点は、予想を越える成果であった。その点では概ね計画通りに進展、あるいは当初の計画以上に進展していると言える。ただし、結果の多くが数値例により示されており、きちんと解析的に分析を完了していないことが課題として挙げられる。年度内に行う予定であったDiscussion Paperとして纏める作業も完了できなかったため、当初より遅れている面もある。
したがって,部分的には概ね順調に進展している部分と、むしろ当初の計画以上に進展している部分があるものの、全体としては研究目的の達成度については「③やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、研究分担者と連携をとりつつ、前年度に行ったFTAとCUと製品差別化に関する論文をディスカッションペーパーとしてまとめ、国内外のセミナーでの報告と学術雑誌への投稿を目指す。また、水平的差別化のみならず製品の品質といった垂直的な差別化に着目して、企業の異質性を考慮しつつ貿易自由化の効果を分析する。
研究分担者は本年度行ったサーベイに基づいて,企業の製品特性の内生的選択を含んだモデルを用いて,移転価格税制が企業立地および各国の経済厚生に与える影響に関する理論研究を推進する。
さらに、当初の研究計画のうち未着手である「国境を越えた企業の合併/買収の効果の再検討」についての分析を開始する。当初から予想されていたように、製品差別化の内生化はモデルの特性や家庭に結果が大きく依存するため、どのような前提で製品差別化の内生的決定を論じるのかについて慎重な判断が必要である。引き続き先行研究のサーベイを続けつつ、一般性がありかつ政策含意に富んだ成果を生み出すことに注力する。
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Causes of Carryover |
当初は年度内にディスカッションペーパーとしてまとめる作業をする必要が見込まれたため、英文校閲費等が生じることが見込まれたが、ディスカッションペーパーの出版や学術誌への投稿は次年度に行われることになったため、英文校閲費等が未使用額として繰り越されている。
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