2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03708
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺西 勇生 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (50710456)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゼロ金利政策 / 最適金融政策 / インフレの慣性 / インフレ期待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、名目金利をゼロパーセント以下に引き下げることができない、いわゆる流動性の罠に陥った状況下での金融政策のありようについて(再)考察を行うことを研究目的としている。現在の研究成果として、2つの論文を執筆中である。研究にあたっては、オーストラリアのメルボルン大学に滞在し、金融政策研究で著名なPreston教授(メルボルン大学)の助言を多く得ている。
最初の、「Liquidity Trap and Optimal Monetary Policy Revisited」では、流動性の罠(ゼロ金利政策)の下で、インフレ率に慣性的な動きがある場合の最適金融政策を分析している。分析を通じてインフレ率に慣性的な動きがある場合には、最適なゼロ金利政策の実行にあたっては事前対応が重要になることが明らかになった。つまり、ゼロ金利政策の解除にあたってはインフレ率が大きく上昇する以前にゼロ金利政策を解除する必要があることになる。この結果は、従来の研究結果とは大きく異なり、インフレ率に慣性がある下では、Front-loading tightening(予防的な引き締め)が金融政策運営に求められることを示している。
次の、「Role of Expectation in a Liquidity Trap」では、インフレ期待が固定(anchor)された場合や、慣性的な動きをする場合に、流動性の罠の下で金融政策の効果がどう変化するのかを分析している。最適金融政策の下では、インフレ期待が固定されない場合や、インフレ期待の慣性的な動きが強い場合でもインフレ率や成長率の低下を防ぐことができることが明らかになった。一方で、金融政策運営で参考ルールとして用いられるテイラー・ルールなどに従うと、インフレ期待が固定されない場合や、インフレ期待の慣性的な動きが強い場合には、インフレ率や成長率が大きく低下することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに研究成果として、2つの論文(「Liquidity Trap and Optimal Monetary Policy Revisited」、「Role of Expectation in a Liquidity Trap」)を執筆しているため。両方の論文とも、ジャーナルに投稿済みとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本や米国などの各国について理論モデルを推計した上でシミュレーションを実行し、各国中央銀行の出口政策への具体的な提案を行っていく予定である。また、ジャーナル掲載に向けて引き続き完成した論文の質を高めるためにコンファランス、セミナーなどで積極的に発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品の購入と英語校閲費の支出を行わなかっために次年度使用額が発生した。この理由として、研究滞在中のメルボルン大学においてプリンター、パソコン、文房具などの提供を受けたことが挙げられる。また、研究についてアドバイスを頂いているメルボルン大学のPreston教授から英語の指導も頂いたため英語校閲をこれまで行う必要がなかったことも理由となる。今年度はこうした支出が抑制されたものの、今後は、シミュレーションなどでソフトウェアを購入することが必要になること、またジャーナルの投稿過程、特に公表最終段階で英語校閲が必要になると考えられることから、未使用額を来年度分に加えて支出する予定である。
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