2018 Fiscal Year Research-status Report
アジア途上諸国における地域内・地域間の所得格差:その実態と要因の分析
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17K03714
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
林 光洋 中央大学, 経済学部, 教授 (80367672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域内格差 / 地域間格差 / タイル指標 / Elbersの新手法 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、引き続きインドに焦点を絞り、空間的な所得格差(家計所得ではなく、家計消費支出で所得格差を計測)を、同国の家計調査データ(NSS:National Sample Survey)を用いて分析した。 その結果、インドの家計消費支出格差は、地域内(都市・農村内)格差のほうが地域間(都市・農村間)格差よりも大きかった。しかし、後者も観察対象期間の12年間(1999/2000年-2011/12年)の中で、目立つようになってきた。都市・農村内格差の要因をさぐるため、世帯主の学歴で消費支出の格差を要因分解したところ、都市部でも、農村部でも、学歴内で生じる消費支出格差のほうが学歴間で生じる格差よりも大きかった。特に、都市部では、高学歴者グループ内の消費支出格差が顕著であった。しかし、同時に、都市部における学歴間で発生する格差も12年の間に目立つようになってきた。 2017年度は間に合わなかったElbersのmaximum between-group inequality の計算方法を用いると、地域間(都市・農村間)格差は通常の方法で測定した数値よりもインパクトが大きくなった。また、都市・農村内格差に影響を与える要因、教育(世帯主の学歴)についても、Elbersの手法を用いると、特に、都市部において学歴間で発生する家計消費支出格差が顕著になることを明らかにした。 これは、都市部と農村部の1人当たり家計消費支出の分布に、また、都市部における高学歴世帯と低学歴世帯の1人当たり家計消費支出の分布にも目立った違いがあることを示唆している。 それらの研究成果を、2018年度の目標にしていた英語論文にまとめ、英語著書の中の1つの章として出版した。また、日本語でも論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内業務等の影響で、当初想定していた研究時間を確保することが難しく、スケジュールが若干遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、インドの地域間(都市・農村間)格差について、Blinder-Oaxaca手法を用い、世帯の属性で、都市・農村間の1人当たり平均消費支出の格差を要因分解する。そのうえで、インド、フィリピン、インドネシアの地域間(都市・農村間)格差の比較分析を試みる。
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Causes of Carryover |
2018年度まで研究の進捗状況が若干遅れ気味であったため、支出額も計画を下回った。2019年度は、現地調査の実施とデータの購入を予定している。
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