2020 Fiscal Year Research-status Report
Optimal Environmental Tax in an Open Economy
Project/Area Number |
17K03724
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
浅子 和美 立正大学, 経済学部, 教授 (60134194)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貿易と環境問題 / 最適環境税 / 社会的共通資本 / 限界的社会費用 / Pigou税 / 生産地主義 / 消費地主義 / 小国と大国 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年世界中で国境を越えた環境問題への関心が高まっており,意識改革の意味も込めて,環境税を導入する国が増えている。そうした背景を受けて,本研究の主目的としては,開放経済なりグローバル化した経済での最適環境税の在り方についての理論的分析を行った。 具体的には,貿易を前提に,生産活動に伴い外部不経済(環境問題)が発生し,それに対するPigou税の料率として生産地主義と消費地主義を比較する。ここで,第1財,第2財について,Qを生産量,Cを消費量,MSC(Q1,Q2)を生産量がQ1,Q2のときに国内で発生する外部不経済部分(限界的社会費用,Marginal Social Cost)としたときに,その国の厚生を最大化する環境税としてのPigou税θを,θ=MSC(Q1,Q2)とするのが生産地主義,θ=MSC(C1,C2)とするのが消費地主義である。浅子(2005,2009)は,2財について貿易を行う小国(非貿易財があっても結論は同様)での最適環境税としては消費地主義に軍配が上がるとしたが,本研究ではその拡張を試みた。グローバル化された世界では,生産地主義の下では,環境汚染や環境破壊の社会的費用が大きな先進諸国からその費用が相対的に小さい発展途上国への企業進出を促し,その結果,発展途上国(ひいては世界経済)の環境破壊が進んでしまうと危惧される。 こうした環境問題に対する政策分析や政策提言においては,環境税を導入した国での税率の最適性や実際の効果を検証する試みも必要であり,いくつかの国や国内の地域を選択し,現地での実態調査を行った。いずれの調査地点においても,経済発展とともに環境破壊が進んでいるのが確認されたが,詮ずるところは「持続可能な経済発展」の着地点を見出し持続させるプログラムを現実のものとして確立することが肝要と理解した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の元になった研究や新しく得られた研究成果としては, ①浅子和美,「生産に対してよりも消費に―開放経済の最適環境税のあり方」(2005年6月),倉澤資成 (編)『市場競争と市場価格』(日本評論社), 201-220頁。 ②浅子和美,「開放経済の最適環境税―小国の一般均衡分析」(2009年12月), 『武蔵大学論集』第57巻第2号(通巻第280号), 89-109頁。③Asako, K. and G. Li,“Social Common Capital, Congestion Tax and Non-tradable Goods in a Small Open Economy,” The Rissho International Journal of cademic Research in Culture and Society, Vol.1 (March 2018): pp. 81-97,がある。実証分析の動向も含めたこの分野の展望論文も作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
浅子(2005,2009)を拡張する方向で得られた研究成果としては,公刊したものとしてAsako and Li (2018),および Discussion Paper 段階のものが2篇あり,これらと作成中の展望論文を含めて日本政策投資銀行設備投資研究所のSpringerbriefシリーズの一冊として2022年に英文冊子を刊行する予定になっている。これは東洋大学経済学部の李綱(Gang Li)准教授との共著とする予定であるが,刊行に当たっては,単著として公刊してきた研究成果も(原典は明記するものの)特段区別しない方針としている。この冊子の刊行によって本研究の総括となる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症パンデミックの影響で海外(バングラデッシュ)でのコンファレンスに参加できなくなったこと,および島嶼国への海外視察が中止となり,その分の支出が実行されなかったため。これらを2021年度に順延して実施する。
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