2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03727
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金子 昭彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10282873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済成長 / 資金調達 / 金融の不完全性 / 国際援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,基本モデルの構築に主な研究時間を当てた.具体的には以下のような2本の論文で本研究のテーマである国際援助に関する理論研究の基礎モデルを展開した. まず,金融市場の不完全性を導入した成長モデルを構築した.本研究のモデルは,消費及び投資に利用できる一般財を生産する企業の生産関数にlearning-by-doingによる生産性の向上を導入し,各種政策や外生変数(企業の生産性,市場の独占度,異時点間の代替弾力性など)の変化が経済成長率の変化をもたらす構造となっている.分析の結果以下のことが明らかになった.1.預金利子率の上昇は経済成長率を高める.2.市場の独占度が下がると経済成長率が高くなる.3.貸出利子率の上昇が与える経済成長率への影響は解析的には曖昧である.この内容はHamada, Kaneko and Yanagihara(2018)として発表されている. さらに,貨幣モデルを利用し貨幣鋳造益と包括的所得税の効率性について研究した.上述のモデルとは異なり,生産側としては物的資本と貨幣を生産要素とした内生成長モデルを用いた.このような状況の下では,どのような政府支出であっても,全額を包括的所得税で賄うことが成長率を最大化させることが分かった.一方厚生最大化のためには経済成長率最大化よりも高い税率を課し,余剰分を貨幣収縮のために使うことが最適であることが分かった.これは,本研究のような内生成長モデルでも一種のフリードマンルールが成立することを意味している.この内容はKaneko and Matsuzaki (2018)として発表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては,計画書に記した通り,次年度の経済援助の成長効果を分析するため,(1)金融市場の不完全性を導入した成長モデルおよび,(2)貨幣モデルを利用し貨幣鋳造益と包括的所得税の効率性の研究を行った.本年度の研究において特筆すべき成果は以下の2点である.(1)の研究結果からは,国際援助を行う際,相手国の金融市場の不完全性の度合いによって,援助の効率性が変化することが示唆され,(2)の結果からは, Kaneko and Matsuzaki (2018)で明らかにされたように,成長率最大化の観点と厚生最大化の観点では最適な税の厚生が異なるということである.つまり,援助を行う際に,援助国が自国の政策として,成長率最大化を目指しているのか厚生最大化を目指しているのかにより,援助原資の調達方法が異なることを意味している. このように,国際援助の基礎モデルの構築という観点からは一定の成果を上げることはできたが,具体的に国際援助の効果については進めることができなかった,したがって,次年度は国際援助を具体的に導入したモデルの構築についても念頭に置いて,研究を進めていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては,今年度の研究計画をもとに,教育制度を考慮した国際援助モデルを構築していく.特に,今年度明らかになった資金調達の重要性を観点に入れて,モデルを構築していくことになる.教育制度の重要性については,長年指摘されているにもかかわらず,実行されてきていないという現実がある.これには今年度明らかになった,資金調達方法そのものによる弊害が問題になっている可能性があるので,資金調達方法にも着目しながら研究を続けていく.研究成果は国内外での報告と査読付き論文雑誌のへの投稿を目指す予定である.
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Causes of Carryover |
現在オーストラリアモナッシュ大学に滞在しているが,必要な機器が大学により用意されていたこと,および出張費の一部が先方で負担であったことにより,予想より支出が少なくなった.次年度繰越額は,引き続きモナッシュ大学に滞在するために滞在費などに利用する予定である.
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Research Products
(4 results)