2017 Fiscal Year Research-status Report
貿易自由化と多様な再生可能資源の包括的・持続的マネジメント
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17K03732
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
寳多 康弘 南山大学, 経済学部, 教授 (60327137)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生可能資源 / 貿易自由化 / 資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の資源需要は急増しており、資源の国際貿易も急速に拡大し、輸出拡大による資源開発圧力がかつてなく強くなっている。持続的に利用すれば将来にわたって大きな価値を生む、ローカルとグローバルな再生可能資源が併存する下で、包括的・持続的な資源のマネジメント(管理)のあり方について、貿易自由化の影響に焦点を絞り理論的に分析する。先行研究でローカルとグローバルな資源は別々に分析され、両者を同時に考察することでこそ、多様な資源の管理政策の相互関連を考慮に入れて、貿易自由化が経済厚生、資源状況や資源管理政策に与える影響について分析できる。
ローカルとグローバルな再生可能資源は、資源管理の容易さが大きく異なり、片方だけ適切に管理しても、もう一方の資源は減少して枯渇する可能性がある。その違いは水産資源の場合を考えれば明らかである。回遊性のない漁業資源はローカルな再生可能資源で、その沿岸の一カ国でも管理が可能となるが、回遊性のある漁業資源はグローバルな再生可能資源なので、資源を利用する関係国が資源管理に取り組む必要があり、合意形成が困難で資源状況は悪化しやすい傾向にある。
研究期間の初年度では、研究代表者が構築したグローバルな再生可能資源の貿易の一般均衡モデルTakarada et al. (2013)などを発展させるべく、基礎的な調査を行った。再生可能資源の状況は、各国の地理的条件だけでなく、どのような資源管理政策を実施しているかによって、資源が豊富であったり枯渇に近かったり、大きく異なる。ローカルな再生可能資源の典型例である森林資源や水産資源の直接的な管理措置と間接的な管理措置である貿易措置は、国や地域によって多様である。どのような規制を分析対象とすることが妥当性を持つかを丁寧に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の基本モデルを構築する準備として、ローカルとグローバルな資源の管理の実態を精査して、それらの特徴を捉え、分類することができた。そして、理論モデルに組み込む際に、どのような設定が望ましいか、妥当性について検討を行った。
基本モデルはTakarada et al.(2013)を参考に構築する。Takarada et al.(2013)の2国モデルにおいて、貿易開始後に、片方の国が資源財以外に完全特化して、片方の国で資源財が生産されないことがある。この理由は、各国の直面する資源状況が同一のため、資源財部門の生産性が資源状況以外の生産技術で決まるからである。このため、両国同時に資源管理政策が実施されず、資源管理政策の相互関連がないという問題がある。
複雑なモデルを作るのではなく、再生可能資源の動学方程式を扱うため、できるだけ単純なモデルを構築することが不可欠である。規制の実態に合った新たな工夫として、規制の強い国と弱い国を設定して、単純化した世界で貿易自由化の影響を考察することの妥当性について検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現実に即した分析の基本モデルを構築する準備が完了したので、具体的に理論モデルを構築して、基礎的な分析に取りかかる。そして、基本的な結果を得ることを2年目の目標とする。特にローカルとグローバルな資源の動学方程式の関連について十分な検討を行い、妥当で扱いやすい設定とすることが不可欠である。
基礎的な分析で予想される結果として、貿易自由化は、ローカルかグローバルのいずれのタイプの資源財を輸出するかで、それぞれの資源水準への影響が大きく異なると予想される。また、どのタイプの資源財の貿易自由化をより進めるかで、資源水準に対して、複雑な影響を与えると考えられる。明確な結果が得られるための条件を導出することに努める。なお、経済厚生の分析については最終年度に行うこととする。
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Causes of Carryover |
研究期間の二年目に海外出張先大学で研究を行い、研究を深めることにしたため、その旅費を手当てするために次年度に予算を残したため。
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