2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03734
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大川 隆夫 立命館大学, 経済学部, 教授 (10258494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林原 正之 追手門学院大学, 経済学部, 名誉教授 (00104901)
野村 良一 立命館大学, 経済学部, 教授 (60465599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 縦割り行政 / 関税 / 補助金 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の公刊論文は、2本である。一本目は、通常の利潤最大化企業と目的が異なる労働者自主管理企業(LMF)におけるクールノー競争下での長期均衡での参入の非効率性について分析している。結果として、通常の過剰参入ではなく、過小参入が生じやすいことが判明した。Komiya(1987、JJIE)によれば、労働者自主管理企業モデルは、かつての日本企業を描写するのに適したモデルであるので、縦割り行政での貿易政策を分析するにあたり、基礎的なモデルのworkingを理解する意味で必要な研究結果であるといえる。 二本目は、政府が自国企業を補助する部門と外国企業に関税を課す部門の二つから構成され、それぞれが(「縦割り行政」よろしく)独立に私益を追求する場合、各部門が政策水準を決定する目的関数として、公益である経済厚生を採用することがあるかどうかを考察している。その結果、自国と外国企業の費用格差が大きからず小さからずという場合、補助金部門は私益を目的関数として採用するが、関税収入最大化を目指している関税部門のみ、経済厚生を当該部門の目的関数として採用することが判明した。加えて、関税部門が経済厚生最大化を目的関数として採用する時の方が、私利を追求する関税収入最大化を採用する場合よりも経済厚生が低いという結果を得た。このことから、必ずしも特定部門が部分的に公益を追求するよりも、各部門が私益を追求したほうが良いという結果を得た。 なお、現在投稿中の関連論文をDPにしている。この論文では、縦割り行政にて生じるであろう関税と補助金に関するタイミングを考察するための前段階となる考察がなされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述したが、5月に公刊される二本目の論文において、縦割り行政の下では、中途半端な公益追求は、却って厚生(公益)を低下させてしまうという結果を得た。しかし、この論文では、各部門が私益か公益かどちらを目的関数として選択するかという2者択一に限定している。しかも、公益は厚生であることを前提としている。 そこで、本論文の発展形として、昨年来、公益を各部門の私益の総和とみなし、加えて、各部門が私益追求のために私益と公益をどの程度ウエイト付けした目的関数と選択するのか、というモデルを分析している。この成果の一つが、今年度中に投稿論文の形にまとまる可能性が高いことから、(2)のおおむね順調に進展している、を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した、現在執筆中の論文では、自国政府が関税と補助金の2部門で構成されている場合における、各部門が目的関数として選択する私益・公益(=私益の合計)の均衡割合を求めている。そして、均衡割合での厚生が、私益を目的関数として両部門が選択していた場合と比較している。この内容の論文を今年度中に完成させ投稿する。 加えて、公益を私益の合計ではなく、厚生にした形でのモデルの計算もスタートする。そして、結果の異同を見る。もう一つの方向性は、自国政府のみならず外国政府も政策を行使する場合を考える。すでに自国と外国の両政府がモノリス(一枚岩)の場合についての貿易政策については、多くの研究がおこなわれている。そこで、自国は縦割り行政、外国政府がモノリス(一枚岩)についてのモデルを考察することとする。 政治経済的なアプローチが伴う事から、早稲田大学の須賀先生の助言なども仰ぎつつ進めていくことにする。
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Causes of Carryover |
大川の予算に関しては、連携研究者である岡村先生の出張旅費に充当する部分として確保していたものである。ただ岡村先生におかれては、本人の体調不良と家族の介護が重なった結果、予定していた複数回に亙る出張中止を余儀なくされたことによる。林原先生の場合についても、予定された出張が直前にご家族の都合で中止を余儀なくされたことによる。これらについては、2018年度に回して、岡村先生、林原先生の出張費として充当することとする。
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Research Products
(3 results)