2017 Fiscal Year Research-status Report
State Owned Enterprises in Liaoning Industry and Slow down of Chinese Economy
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17K03736
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松野 周治 立命館大学, 経済学部, 授業担当講師 (10128457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曹 瑞林 立命館大学, 国際教育推進機構, 教授 (90341619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遼寧省 / 大連 / 旅順経済技術開発区 / 大連機車車両有限公司 / 遼寧自由貿易試験区 / 営口沿海産業基地 / 地方税体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
遼寧省経済に関する基礎データの収集、整理を基礎にして2017年8月、大連市及び営口市で 実態調査、および現地研究機関(東北財経大学経済社会発展研究院、大連市人民政府発展研究センター)とのワークショップを実施し、国有企業改革の具体的内容と地域経済発展政策を以下のように明らかにした。 1.遼寧省最大、約30%の経済規模を占める大連市における国有企業改革の現状と到達点がつぎのように明らかになった。a.中央親企業と地方政府の協力を背景に大連機車車両有限公司が、旅順において大規模生産及び研究開発拠点の建設を、計画の一部を上方修正しながら進めている。b. 同公司に加えて、造船、機械などの国有企業が旅順開発区に進出し、日本企業との合弁も含めて生産の高度化を進めている。c. 他省と比べて遅れている「三供一業」分離が在大連中央企業29社57事業すベてで着手されている。 2.遼寧省第3位の経済規模を占める営口市において、国家戦略を背景に沿海産業基地建設が進められ、新たな地域経済発展が目指されている。 国際学術セミナー「遼寧省経済と大連・営口の国有企業改革」(2018年1月、東北財経大学経済社会発展研究院から2名参加)および、「遼寧省経済と国有企業改革の現状―瀋陽市を中心に―」(2018年2月、遼寧省老年科学技術工作者協会から1名招聘)を立命館大学で開催し、2017年から本格的建設が始まった遼寧自由貿易試験区の現状と国有企業改革との関連、瀋陽を中心とした国有企業改革の経緯と現状、並びにシンガポールを改革のモデルとして置いていること等を明らかにした。最後の点は、管見の限り指摘されたことがなく、「体制移行の罠」克服の中国的経路の研究につながる重要な論点である。 以上に加え、文献、資料、中国との研究交流を通じ、国有企業改革の外部環境を把握するため、遼寧省と大連市を中心に地方税体系の現状と課題について分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、遼寧省経済の中核、国有工業企業に焦点を当て、「体制移行の罠」の現状と克服可能性について考察することを目的としている。平成29年度は「遼寧省国有工業企業基礎データの収集分析(第1次)と大連・営口調査」を主課題に、実施計画どおり以下の研究を進めた。 1.2015年までの遼寧省国有工業企業に関する基礎データを、『遼寧統計年鑑』等を用いて収集・整理した。国有企業改革と遼寧省経済に関する政策展開の分析も加え、その成果を環日本海経済研究所『ERINA REPORT PLUS』第138号(2017年10月)、韓国東北亜経済学会年次大会(2018年2月、春川)等で公表した。 2.大連・営口現地調査(2017年8月)を実施し、国有企業生産高度化の実態を大連機関車車両公司の旅順新工場で確認するとともに、旅順開発区における国有企業、営口沿海産業基地建設計画について最新情報を入手した。また、東北財経大学経済社会発展研究院、大連市発展研究センターとのワークショップ等を通じて、大連における国有企業改革進展の最新情報を入手した。同調査の成果の一部は、立命館大学『社会システム研究』第36号(2018年3月)で公表した。なお、鞍山鋼鉄集団の営口・新鋭臨海製鉄所調査は、企業側の事情で実施できなかった。文献調査で可能な情報を収集するとともに、次年度以降の実態調査実施可能性について探究する。 3.国際学術セミナー「遼寧省経済と大連・営口の国有企業改革」(2018年1月)を東北財経大学経済社会発展研究院から研究者を招聘して開催し、平成29年度の研究をまとめた。加えて、当初計画には無かったセミナー「遼寧省経済と国有企業改革の現状―瀋陽市を中心に―」(2018年2月)を遼寧省老年科学技術工作者協会から研究者を招聘して開催し、第2年度の瀋陽地域調査の準備も兼ねた遼寧省国有企業改革研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度の研究成果を基礎に「遼寧省国有工業企業基礎データの収集分析(第2次)と瀋陽調査」を主課題として、以下の研究を進める。 1.初年度に収集・整理した遼寧省国有工業企業に関する基礎データの分析を、全国および他省との比較などを通じて、深化・発展させる。 2.国有工業企業が集中し、改革が求められている瀋陽において、現地調査並びに現地研究機関(遼寧老年科学工作者協会)との共同シンポジウムを実施し、生産高度化などの実態を把握するとともに、開発区建設、外国直接投資、対外貿易、財政状況など、国有企業改革の外部環境を明らかにする。あわせて、大連保税区管理委員会で自由貿易試験区の実態についてヒアリングするとともに、東北財経大学・遼寧(大連)自由貿易区研究院との学術交流を実施する。(平成30年8月) 3.研究成果を学会等で報告し、学術論文を執筆する。また、第2年度の研究成果をまとめ、公開ワークショップ「遼寧省経済と瀋陽国有企業の生産高度化」(平成31年1月、立命館大学)で公表する。 当初の研究計画通り、平成31年度は「遼寧省国有企業から見た中国経済と『体制移行の罠』」を主課題として、次の研究を進める。1. 2年間の遼寧省国有工業企業の生産高度化、遼寧省経済の研究を総括するとともに、中国全体の経済成長および「体制移行の罠」について分析する。2. 2年目の研究成果を学会等で発表するとともに、学術論文を執筆する。また、研究成果まとめのために公開ワークショップ「遼寧省国有企業から見た中国経済と『体制移行の罠』」を開催する(平成31年9月、大連・東北財経大学)とともに、補充調査(同月)を実施する。3. 3年間の研究成果を最終報告書にまとめる。
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Causes of Carryover |
国外研究協力者を招聘し、国有企業改革をテーマにした国際学術セミナーを2回開催したが、国際航空運賃が予定額を下回ったことなどから、14,440円の次年度使用が生じた。平成30年度に計画している中国遼寧省瀋陽市等の海外実態調査経費に使用する。
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Research Products
(10 results)