2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03737
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
渡邉 正英 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50434783)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学的曖昧性 / 気候変動 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、気候変動の予測確率の不確実が政策評価や政策判断に与える影響を実証的に検討することである。科学的事実に基づく政策判断や政策評価が求められているが、気候変動に関する予測確率は完全ではなく、複数の科学モデルに基づく複数の予測確率が存在する。このような科学的予測確率の不確実性(科学的曖昧性)が、人々の政策判断にどのような影響を与えるのかについては、実証的に明らかになっていない。本年度は、曖昧性下の意思決定モデルを基礎理論とする実証モデルに基づき、気候変動に関する科学的曖昧性が人々の政策判断に与える影響を分析した。
実証分析によって得られた結果は以下である。人々は科学的曖昧性を回避する傾向があり、さらに、曖昧性に対する態度の異質性(曖昧性回避度の異質性)が大きいことが明らかとなった。また、曖昧性回避度の異質性が政策判断の相違へ与える影響は大きく、仮に不確実な予測確率に対する認識が同じであったとしても、曖昧性に対する態度の違いのみで、個人の政策判断が異なることが示された。これは、気候変動政策に対する意見対立の要因として、科学的曖昧性に対する異質性の影響は考慮されてこなかったが、その影響は無視しえないものであることを示唆するものである。
次年度以降、科学的曖昧性の質の違いが個人の政策評価へ与える影響を実証的に明らかにし、科学的曖昧性が政策判断や政策評価へ与える影響についてより詳細に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、科学的曖昧性に対する態度を計測し、さらに曖昧性態度の異質性が政策判断の相違へ及ぼす影響を実証的に明らかにすることができた。研究計画において初年度に計画していたことがおおむね実行できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度とは異なる科学的曖昧性を対象としてweb調査による選択実験を行い、科学的曖昧性が政策判断や政策評価に与える影響について詳細に検討する。これは、本年度得られた実証結果が、本年度提示した気候変動の科学的曖昧性に対しての特異なものであるか否かを検討するためである。具体的には、気候変動に関する様々な科学的曖昧性や、気候変動以外の科学的曖昧性に対する人々の選好を計測し、比較検討する。
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Causes of Carryover |
次年度行うwebアンケート調査のプレテストを実施する予定でいたが、実施できなかった。次年度、本調査とプレテストを実施する予定である。
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