2017 Fiscal Year Research-status Report
国際産業連関表を用いたグローバルバリューチェーンの実証分析
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17K03749
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
黒岩 郁雄 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター, 上席主任調査研究員 (40403612)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バリューチェーン / 付加価値貿易 / 東アジア / 電子産業 / 自動車産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の初年度にあたる平成29年度は、東アジアの電子産業、自動車産業のバリューチェーンにテーマにディスカッションペーパー(Structure and comparison of the electronics and motor vehicle value chains in East Asia, IDE Discussion paper No. 694)を執筆した。同論文では、OECD国際産業表を使いながら、上記産業の付加価値貿易および上流、下流のバリューチェーンについて分析した。その結果、(1)自動車産業と比較して、電子産業では垂直特化(vertical specialization)が進展している、(2)東南アジア諸国の垂直特化指数は、北東アジア諸国と比較して高く、特に韓国の産業は中国との統合が進み、タイの産業は日本への依存度が継続して高い、(3)中国はこれまで多国籍企業の生産プラットフォームとしての役割が大きかったが、消費財の最終市場としての役割が拡大した、特に韓国は中国市場への依存度を急速に高めた、などが明らかになった。 また平成29年度は、グローバルバリューチェーンや付加価値貿易に関する基礎的な文献サーベイを行った。なかでもアジア経済研究所と国際機関が共同執筆したMeasuring and Analyzing the Impact of GVCs on Eocnomic Developmentの中で引用された論文の多くは、次年度以降の論文執筆に役立つものと期待される。 コンピュータプロブラム(R言語)については、これまで作成したグローバルバリューチェーンや付加価値貿易に関するプログラムを修正し、より効率的に計算できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1年度の目的は、付加価値貿易やバリューチェーンの基礎的な分析手法を開発することであった。特に、国際産業連関の序列性を分析するために、三角化などの手法を試みる予定であったが、より簡便で効果的な手法が登場したため、当初の予定を変更して、東アジアにおける代表的な産業である自動車と電子産業のバリューチェーンの分析にテーマを変えた。当初、自動車と電子産業のバリューチェーンに関する分析は、平成30年度、31年度にそれぞれ実施する予定であったが、平成29年度に一部前倒して実施した。 また分析の対象国として、当初は東南アジア諸国を念頭に置いていたが、対象を広げて中国、日本、韓国、台湾など北東アジア諸国の一部を含めることにした。それによって、東南アジア諸国の貿易・産業構造の特徴がより明確になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度、31年度は、自動車と電子産業のバリューチェーンに関する分析を引き続き実施する予定である。なかでもグローバルバリューチェンの理論的な背景、東アジアの生産ネットワークの深化、貿易構造の高度化、裾野産業の発達などに焦点を当てていくつもりである。 当初の計画では、英文書籍(単著)出版のための原稿を平成32年度に完成させる予定であったが、計画を一年間前倒しして、平成31年度に原稿執筆を終了させるつもりである。それによって、平成32年度に書籍の編集作業を行うことができる。同時に、新たな論文を執筆すると同時に、これまで執筆した論文の一部を学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
昨年度は東南アジアへの現地調査やフランスへの国際会議出席を予定していたが、業務が多忙であったため、出張を断念した。今年度は、これらの出張を実施し、研究成果の向上につなげたい。 今年度は、タイ、マレーシア、インドネシアへの現地調査を念頭に置く。またOECDの主催するグローバルバリューチェーンの国際会議に出席する予定である。 さらに、論文執筆のために必要となる東南アジアの自動車および電気・電子産業の書籍を購入する。
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Research Products
(1 results)