2017 Fiscal Year Research-status Report
South Korea and Taiwan's challenges in completion of catching-up and transition to innovation-led economies
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17K03752
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
佐藤 幸人 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 研究センター長 (90450460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 英美 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (80404078)
安倍 誠 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東アジア研究グループ, 研究グループ長 (90450478)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャッチアップの完了 / イノベーション / 公的研究機関 / 電子部品産業 / IT産業 / 重化学工業 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費事業自体の取り組みとしては、台湾から台湾経済研究院の林欣吾第3研究所所長及び林佳静同研究員を招聘し、科学技術政策について議論するとともに、アジア経済研究所の夏期公開講座の枠を利用して、「日本と台湾のイノベーション・システムと公的研究機関」というセミナーを開催した。台湾の公的研究機関、特に工業技術研究院はそのキャッチアップ過程で重要な貢献をおこなったが、キャッチアップ後の現在においてどのような役割を担っているのか、日本などの公的研究機関と対照させながら検討した。 また、それぞれが本科研費事業の成果を、既に実施中の他の事業に反映させていった。佐藤が『アジア経済』第58巻第4号(2017年)に発表した「台湾電子産業における電子部品部門への傾斜--大立光電と聯詠科技のケーススタディからみた過程と要因--」は、台湾の電子産業において1990年代以降、何故、また如何に電子部品部門の比重が増大したかを論じている。それはキャッチアップからキャッチアップ後への産業発展のパターンの移行の一形態を示している。 安倍は『低成長時代を迎えた韓国』(アジア経済研究所 2017年)を編集、刊行した。そのなかには吉岡が執筆した一章も収められている。本書はキャッチアップが完了し、成長率が低下した韓国においてどのような問題が生じているのかを広く論じている。安倍は自身が執筆した一章で、重化学工業の現段階の課題を、日本の経験と対比しながら検討している。吉岡はIT産業の成長の鈍化の要因を議論し、キャッチアップを終えた後発国が直面する問題を明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の計画にしたがって、平政29年度は主に先行研究のレビューをおこなった。特に計画の作成段階で注目していた、Lee KuenがFranco Malerbaとともに、2017年に刊行されたResearch Policy,において、Catch-up cycles and changes in industrial leadershipという特集を組んでいたので、これを中心にレビューをおこなった。 その結果、彼らのアプローチが、今後、わたしたちが研究を進めるうえで大いに参考になることが明らかになった。特に彼らがキーコンセプトとして用いている「機会の窓」は、わたしたちの研究でも重要な基礎となりうると考えられる。一方、彼らが世界シェアによってキャッチアップの程度を測定していることは、批判的に検討する余地があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究レビューは今後も継続したい。前述のように、2017年度はLee Kuenの研究から大いに触発されることになったが、彼の研究および彼が依拠している研究にレビューを広げていきたい。 同時に当初の計画にしたがって、ケーススタディにも着手したい。まずは研究対象の選定をおこなう。本事業のメンバーはいずれも産業研究の豊富な経験を持っているので、それを踏まえて適当なケースを選ぶことにしたい。
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Causes of Carryover |
研究協力者の伊藤信悟が本務多忙のため、出張に行くことができなかったことが、差額が生じた原因である。 平成30年度においては、まず伊藤の所属が変わり、出張に行きやすくなったので、出張の日数を追加する。第2に吉岡への分担金を追加し、それによってより多くの研究会を開く。第3に購入を見合わせていた資料を購入する。
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Research Products
(5 results)