2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおけるイノベーション・モデルのアメリカ化:医療機器産業の事例研究
Project/Area Number |
17K03753
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
川上 桃子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 次長 (30450480)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 東アジア / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東アジアにおけるシリコンバレー型イノベーション・モデルの影響力の高まりを「イノベーション・モデルのアメリカ化」現象としてとらえ、東アジアの経済発展に対するそのインパクトと、この現象の背後で働いているアクター間関係を分析する。事例分析の対象として、台湾、中国の高付加価値型医療機器セクターを取り上げる。初年度にあたる2017年度は、以下の分析を進めた。第一に、文献サーベイを行い、アメリカのイノベーション・システム、シリコンバレーとアジアのハイテク・コミュニティのリンケージに関する先行研究、イノベーション・システムにおける産官学間関係に関する既存研究のサーベイを進めた。第二に、台湾における、シリコンバレーとのリンケージを活用した医療機器イノベーション・コミュニティの創出・育成の試みに関する調査を行った。具体的には、台湾の医療機器スタートアップの創業者、シリコンバレー活用型の医療機器エコシステム創出の試みであるスタンフォード・台湾バイオメディカルプログラムの関係者、台湾のイノベーション政策関係者らへのインタビューを進めた。特に、「スタンフォード・台湾バイオメディカルプログラム」の関係者らへのインタビューを通じて、台湾においてシリコンバレーと深いつながりを持つ医療機器イノベーション・コミュニティが立ち上がり、この成功を受けて同様の政策的な取り組みが他の分野にも広がりつつあることを確認できたことは、有益であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。ただし、本研究の準備段階、および2017年度に行った調査から、中国の医療機器エコシステムの現状は、本研究の問題意識とはやや隔たりがあることが分かってきた。シンガポール、インド等の事例のほうが、医療機器セクターにおける「イノベーション・モデルのアメリカ化」の事例としてはふさわしい可能性がある。(1)台湾の事例を集中的に掘り下げつつ、シリコンバレーでの調査を通じてアジアとの関わりを広く分析する手法をとるか、あるいは(2)中国ではなくシンガポールを分析事例として台湾との比較を行うか、そのいずれの分析戦略をとるかを2018年度前半に決定する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究計画に基づいて、文献サーベイを行いつつ、アメリカ、台湾、中国ないしシンガポール・インドにおいて、医療機器ベンチャーの創業者、意述べ〇ション政策担当者、ベンチャーキャピタル、ユーザーである医師等へのインタビュー調査を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
2017年度は台湾での調査と文献サーベイを中心に研究を進めたため、米国出張は見送った。18年度以降、米国での調査を計画している。
|