2019 Fiscal Year Annual Research Report
On the Effects of Inflow of Immigrants on the Sustainability of Public Education System
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17K03757
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 隆一 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00397704)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公教育 / 政治経済モデル / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は本研究課題の最終年度にあたり、これまでの研究成果の取りまとめを中心に行なった。具体的には移民受け入れが公教育支出水準に与える効果を定量的に把握するために政治経済学モデルを用いて、いくつかのシナリオのもとでの分析を行った。それと並行して、一橋大学の増田一八講師に研究協力者としての参画のもと、移民に対する教育の義務化がもたらす影響を把握すべく、義務教育制度の変更の影響に関する実証分析も行った。 移民受け入れが公教育支出水準に与える効果分析においては、当初は移民受け入れによる所得分布の変化を内生化したモデルによるシミュレーションを計画してはいたが、分析の結果が内生化する定式化の選択に依存し、かつその影響は二次的な影響が追加されるにとどまるため、様々な所得分布の外生的変化を想定した各シナリオのもとでのシミュレーションを行った。その結果、移民受け入れによる児童一人当たりの公教育支出の変化は、移民子弟の数及び追加的教育コストと移民家計所得の平均および分散に大きく依存することが明らかになった。特に、2006年時点の労働力を2030年以降も維持するために移民を受け入れ、移民家計所得は平均所得より10%低く、教育コストが日本人に比べて10%高いという仮定のもとでは、一人当たり教育支出は2%から5%程度低くなることが予測値として得られた。 上記分析と並行して行なった義務教育制度の変更の影響に関する実証分析では、義務教育年数の延長は直接的な教育コストを引き上げるものの、長期的には所得上昇や健康増進による医療コストの減少といった正の効果が直接的な教育費用を相殺する可能性を示唆する分析結果を得ることができた。
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