2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on Capital Taxation
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17K03758
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
国枝 繁樹 中央大学, 法学部, 教授 (40304000)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 資本税制 / バブル / 負債政策 / 行動経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、資本に対する我が国の税制のあり方につき、行動経済学に基づいた資本所得税制の我が国への適用、日本企業の負債政策と税制、バブルと税制等のトピックを中心に、最近の研究動向を踏まえ、理論的・実証的分析を行うこととしている。 平成30年度においては、行動経済学に基づいた資本所得税制に関連して、我が国の資本所得税制で重要な役割を持つ退職給付税制につき研究を行い、その結果は、金融経済調査会の報告書において「退職給付税制について」として公表された。また、「高齢者の資産選択と税制」について、10月の日本財政学会において、これまでの研究成果につき、論文発表を行った。さらに、高齢者向けの税制のあり方等につき、行動経済学に基づく分析を行う上で、既存のデータでは、様々な疑問に答えることができないことが明らかになったため、十分なデータの存在しない中高年層の認知能力、金融リテラシー、リスク回避度およびリスク資産の保有・割合についてのマイクロデータを独自に収集し、分析を行うこととした。既存研究等を踏まえた広範なトピックについての質問票を作成し、業務委託によりインターネット・サーベイを実施し、45歳から79歳までの男女1800人より回答を得た。これは、高齢者の資産選択の決定要因に関する非常に貴重なデータで、現在、そのデータを用いた実証分析を進めている。 日本企業の負債政策と税制に関しては、特に最近の日本企業の財務政策の特徴である過剰な内部留保の原因と影響につき研究を進めた。バブルと税制についても、内外の学会に参加し、バブルを組み込んだ経済モデルの最近の動向につきフォローし、そうしたモデルにおいて税制の果たしうる役割につき、さらなる検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画において、行動経済学に基づいた資本所得税制については、研究成果を踏まえ、金融税制の具体案について論じることとしていたが、金融経済調査会報告書の論文において退職給付税制のあり方を提示し、また日本財政学会において、高齢者向けの金融税制に関し、現行税制の問題点とその改革の方向につき報告を行うことができた。さらに、今回、中高年層の認知能力、金融リテラシー、リスク回避度および資産選択に対するサーベイを新たに実施し、貴重なデータを入手したことで、今後、同データを用いて、高齢者の資産選択と税制に関する分析が大きく進むものと期待している。 日本企業の負債政策と税制およびバブルと税制の研究についても、内外の学会への参加を通じ、関連研究の最新の動向を知ることができ、研究内容の深化につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年)は、本研究の最終年度であり、研究成果のとりまとめおよびその内容の内外の学会その他の機会での報告に積極的に取り組んでいくこととしている。行動経済学に基づく資本所得税制に関する研究においては、前年度に実施した高齢者の認知能力、リスク回避度および資産選択についてのサーベイデータを用いて、広範な実証分析を行い、その結果を取りまとめ、内外の学会で論文報告を行っていく。また、これまでの研究成果を踏まえて、我が国の資産形成税制のあり方についての論文を公表する。 バブルと税制についての研究成果についても、国際学会での報告を予定している。さらに、日本企業の負債政策と税制に関する研究成果についても、内部留保増加という最近の日本企業の財務政策の動向を踏まえつつ、論文の公表を図ることとしている。
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Causes of Carryover |
本年度の最大の支出項目は、高齢者に対する広範なインターネット・サーベイであるが、その実施の前に、的確な回答を得られるような質問内容の設定等に万全の準備を行ったために、同サーベイに必要な費用が確定したのが、1月下旬となった。このため、若干の残額が残り、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用分については、速やかに本年度の研究に必要な支出項目に充当していくことを計画している。
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