2018 Fiscal Year Research-status Report
ミクロデータに基づく科学への投資の効率性と妥当性の検証
Project/Area Number |
17K03759
|
Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
鈴木 潤 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00407230)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 科学技術政策 / ミクロデータ / 科学論文の多様性 / 中小企業政策 / ソフト支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
政府による科学への投資の効率性に関しては、既に科学論文の論文数や被引用数をアウトプット指標とする観点から分析が多数行われているが、本研究では先行研究とは異なり「科学論文の多様性」をアウトプット指標とする分析を行っている。 平成30年度については、J-GlobalとScopus、科学技術研究調査などのデータをメソ/ミクロレベルで接続し分析した結果、日本の大学は全般的にみて組織内多様性(α-diversity)が増加しているが、組織間多様性(β-diversity)が減少しており、緊縮財政の下で予算を増やさずに国全体での多様性を確保するためには、β-diversityの拡大(すなわち大学の個性化)が有効であることを示唆した。また、科研費で行われている分野別の研究費配分のように、研究者数(申請数)に応じて研究費が配分される状態が繰り返されると、結果的に特定の分野への集中が生じ、多様性の一指標であるbalanceが悪化することを示唆した。そして、これらの問題の解決に向けたポリシー・インプリケーションとして、研究費のソースとして国のmission-oriented補助金と企業由来の外部資金の割合を増加させ、なおかつ補助金募集分野の運用が固定化されないようにmission-oriented補助金の運用を設計することが有用であるかもしれないという考察を行った。 さらに、大学以外のメソレベル(組織単位)での政府の研究開発支援の効果を分析するため、経済産業省の中小企業R&D支援プログラム(インプット)と売り上げや生産性などのアウトプットの関係を分析するための詳細データ(工業統計)の利用を申請し、データベースの整備を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学セクターについては、アウトプット側のデータ基盤として論文データのJ-Global、インプット側のデータ基盤として、総務省の科学技術研究調査の個票データ(統計法に基づく2次利用申請済み)を利用し、予定より迅速に分析を行うことができた。産業セクターについては、インプット側のデータとして経済産業省のサポーティングインダストリーの認定及び補助金交付データ、アウトプット側のデータとして工業統計(統計法に基づく2次利用申請済み)の利用環境を整えることができた。これらのデータを用いて既にいくつかの予備的分析を実施し、論文発表を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度については、産業セクターの分析を進める予定である。経済産業省の中小企業支援政策の効果について、予備的に行った特許の出願をアウトプット指標とする分析に加えて、売り上げや生産性をアウトプットとする分析をプロペンシティスコア・マッチングなどの手法を用いながら行い、分析結果を統合的に解釈する。
|
Causes of Carryover |
平成29年度に購入を予定していたSCOPUS Customized data 一式(エルゼビア社)は、本学が文部科学省からの受託事業として実施しているSCIREXセンターのデータ整備事業の一環として、相当するデータが学内で利用可能となる可能性があるため、本プロジェクトとしての購入を見合わせている。平成31年以降に引き続きSCOPUSデータが利用可能かどうかを見極めて、執行を判断する予定である。
|
Research Products
(1 results)