2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03760
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
両角 良子 富山大学, 経済学部, 准教授 (50432117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害者 / 合理的配慮 / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、就労における障害者への合理的配慮について、個票データによる計量分析から、日本の労働市場における合理的配慮の現状を明確にする。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」(2016年4月施行)により、合理的配慮への取組が従来以上に重視される一方、日本では実証研究の蓄積が極めて乏しいのが現状である。本研究の目的は、(1)合理的配慮の状況が労働者(障害者)の労働市場に与える影響の計測や、(2)合理的配慮の実現へのプラス要因・マイナス要因の解明を、データを用いて行うことである。 平成29年度は、実証分析を行う上での予備的な考察として、日本国内における、近年の障害者に関する労働政策(合理的配慮の提供義務、雇用差別の禁止、障害者雇用納付金制度)が労働市場に与える影響を、経済学の理論モデル(静学モデルと動学モデル)から分析した。具体的には、政策介入によって生じる障害者と非障害者の賃金率と雇用量の変化や、障害者と非障害者のそれぞれの労働市場での生産者余剰・労働者余剰・社会的余剰の変化を検証した。合理的配慮の提供にかかる費用として、固定費用と一人当たり費用(準固定費用)の双方を分析対象とした。以上の理論モデルにより、変数間の関係性を明確にし、実証分析の際の符号条件を整理することができた。これらの検討は実証分析での「道しるべ」になるとともに、実証分析から新たなエビデンスが得られた場合には、理論モデルへのフィードバックにもつながることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、以下の三点について取り組んだ。第一に、「研究実績の概要」でも述べたように、実証分析のための予備的な考察として、日本国内における、近年の障害者に関する労働政策(合理的配慮の提供義務、雇用差別の禁止、障害者雇用納付金制度)が労働市場に与える影響を、静学モデルと動学モデルから分析した。障害者と非障害者のそれぞれの労働市場を考え、労働需要関数・労働供給関数から、政策介入による賃金率と雇用量の変化や、生産者余剰・労働者余剰・社会的余剰の変化を検証した。 第二に、本研究のために必要となる統計手法の検討を行った。近年の海外および国内の経済学系の学術雑誌の査読では、実証系論文の採否(アクセプト・リジェクト)の判断基準として、推定上のバイアスに配慮した統計手法や、因果関係の明示的な解析を目的とした方法論(統計的因果推論)が重視されるようになってきている。そのため、分析上、起こりうるバイアスを精査し、バイアスを除去するための統計手法を検討するとともに、統計的因果推論による統計手法の実用可能性を検討した。 第三に、データの整理・加工、変数間の関係性の確認作業、予備的分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を鑑みつつ、追加的に必要とされる知識・検討課題がみつかれば、その都度、考慮していく。分析結果は論文にして各種学会で発表し、改訂したのち、国際的な学術雑誌に投稿していく。
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Research Products
(2 results)