2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03763
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川地 啓介 三重大学, 人文学部, 准教授 (40455069)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 財政競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に構築した本研究のベンチマークとなる基本モデルを活用して、当初計画で設定した研究課題の一つである政策の多様性に焦点を当てた研究を行った。 特に、標準的な税競争モデルにおいて所与とされてきた各国政府による政策決定の手番が政府の政策変数となり得ることが近年の理論的研究の蓄積によって示されてきたことに注目して、生産技術に関して非対称な国の政府による税率決定の時期の選択を明示的に基本モデルに導入した。さらに、グローバル化の進展している現実経済を描写するために標準的な税競争モデルにおいて置かれる社会全体の資本量を一定とする仮定を見直し、税競争を行う当該国の住民のみが資本を供給するのではなく、国際統合された資本市場において資本収益率に応じて地域外からも資本が供給される状況を分析できるよう拡張を行った。これらの拡張を踏まえた分析の結果、税競争を行う当該国の政府がそれぞれ先導者と追随者となる逐次手番の複数均衡、生産技術の高い国の政府が先導者となり生産技術の低い国の政府が追随者となる均衡、税競争を行う当該国の政府が同時に税率を決定する同時手番の均衡が実現する可能性が示された。さらに、税競争に晒される国以外から供給される資本が国際統合された資本市場における資本収益率に反応しやすい場合には、逐次手番の複数均衡が実現しやすくなり、その反面、同時手番の均衡が実現しにくくなることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画で研究課題として設定した多様な政策手段について分析を進めた。本研究の初年度に構築した基本モデルを拡張することで分析を行い、得られた研究成果を論文としてまとめた。さらに、その成果は国際学会における事前審査を通過して報告された。本研究の目標の1つとして事前審査付きの国際学会における報告をあげていたが、昨年度に続きクリアすることができた。以上から、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に得られた知見の精査を進める予定である。特に、本年度にまとめた論文をブラッシュアップさせることに取り組み、査読付き学術雑誌に投稿できる水準まで論文を深化させる。また、可能であれば、標準的な税競争モデルについて、当初計画で設定した研究課題に関連した分析を行う予定である。そして、新たな研究成果を導出することができれば、論文としてまとめ、学会における報告や海外及び国内の学術専門誌に投稿することを引き続き目標とする。
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