2019 Fiscal Year Research-status Report
公共選択にまつわる地方行政官の行動様式に関する研究:職員団体と公共調達に注目して
Project/Area Number |
17K03771
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
西川 雅史 青山学院大学, 経済学部, 教授 (90334143)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地方自治体 / 公共選択 / 首長選挙 / 地方財政 / 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / 科学的特性マップ / 迷惑施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Harmful Negativity Bias Under a Decentralized System: Retrospective Voting in Japanese Mayoral Elections 1983-2015." (in Theoretical and Empirical Studies, Springer). 2.「高レベル放射性廃棄物の地層処分先を考える」(青山経済論集,MIMEO) 3.「時論:社会科学と科学的特性マップ」(アトモス,2020年1月) ・上記のうち1は,日本の地方自治体の首長選挙が地方財政の健全化を促すとは限らないことを実証的に示した希有な論文である.不況期には地方財政の健全性を損なうこと(支出を拡大すること)が指向されることを明らかにするなど,地方自治体の公共選択を考える上で非常に重要な示唆を含んだ研究といえる.上記のうち2と3は,迷惑施設の受け入れに関する地方自治体の公共選択について考察したものである.わが国は,すでにして高レベル放射性廃棄物を所有しており,これを処分するための施設をいずれかの地域に受け入れてもらわざるを得ない.そうした難しい公共選択を行うために国民は具体的な情報を求めているが,それが国から十分に発信されていない.この政策課題の重要性を示すのが上記2の共同の研究成果である.上記の3は,2に引き続き高レベル放射性廃棄物というテーマを扱った成果である.3では,「科学的特性マップ」をデジタル化するまでの作業経緯とその開示について言及しつつ,これを用いて高レベル放射性廃棄物の処分施設の立地地点の妥当性を社会科学の視点から比較考量できるよう促した論文である.特定の地域に負担がかかる迷惑施設の立地は,国にとっても地方自治体にとっても困難な公共選択となる.こうした課題がいかにして解決されるのかは,継続的に考察される必要がある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・昨年度は,1つの区切りとして,市町村首長選挙と地方財政との関係性について論文を公刊することができた.(Nishikawa, Masashi(2019). “Harmful Negativity Bias Under a Decentralized System: Retrospective Voting in Japanese Mayoral Elections 1983-2015,” In Advances in Local Public Economics (Minoru Kunizaki eds.)) ・地方自治体の公共選択を考察する一環として,高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する公共選択の研究が大きく進展させることができた.それらは,大学紀要(青山經濟論集),依頼原稿の形で専門雑誌(アトモス)で公刊された.このほか,関連する2つの論文が現時点で投稿中であり,これを公刊することが当面の課題となる. ・2019年度は,公共調達に関する研究の進展が計画よりも遅れがちであった.現在,データの収集(更新)作業を地方自治体との間で進めており,データの更新・修正・調整後に,論文の作成(研究作業)を進める予定である. ・地方自治体の公共選択として,都市の人口集中の構造的分析を開始している.この萌芽的な研究はまだ途上であり,現在は,既存研究をサーベイしている段階である.いずれは,興味深い研究へと発展させることができると考えている. ・以上のように,研究成果をまとめつつあるテーマ,研究計画を推進すべきテーマ,今後取り組む予定のテーマとがあり,総体として「地方自治体の公共選択」という研究課題の考究は,おおむね順調に進展していると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
・投稿中の論文の公刊をすすめる. ・データ収集(更新)を進めている研究テーマについては,データ収集後に,すでに構想されている経済モデルと整合させ,実証的分析につなげる. ・萌芽的段階にある研究テーマについては,サーベイの後,新規性を有する研究へと発展させるよう取り組む.当然のことながら,現時点で,ある程度の研究ターゲットは絞ってある.
|
Causes of Carryover |
英文での刊行を予定していた論文の1つを和文で公刊することとしたため,英文校正などの費用が抑制された.また,予定されていた海外出張などをとりやめたため,その費用が抑制された.
|
Research Products
(1 results)