2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03775
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川瀬 晃弘 東洋大学, 経済学部, 准教授 (10453854)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境政策 / 土壌汚染対策法 / 制度的管理 / 執行過程 / 外部性 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究期間の1年目である平成29年度は,土壌汚染対策の実態解明と経済評価に関する研究成果として,3つの学会報告を行い,2つの論文を刊行した。 第1に,土壌汚染地の制度的管理について分析した論文を,学会(第21回環境法政策学会)において報告し,座長セレクト論文(『環境法政策学会誌』第21号, 近刊予定)として掲載されることとなった。2010年の土壌汚染対策法の改正において,それまで単一の指定区域とされていたものが健康リスクに応じて要措置区域と形質変更時要届出区域の二つの区域によって管理されることになったが,本研究では,こうした制度変更によって土壌汚染の掘削除去を選択する割合が減少したことを明らかにした。 第2に,土壌汚染対策法の執行過程において行政官の行動について分析した研究を学会からの依頼論文(『公共選択』第68号)としてまとめ,学会(公共選択学会第21回大会)において報告した。本研究では,その存在が不確実な土壌汚染に関する調査命令を発出する過程について分析し,命令発出に積極的な自治体と消極的な自治体が存在していることを明らかにした。現在は,この研究をさらに発展させている。 第3に,土壌汚染の存在が近隣地価に与える影響についてヘドニックアプローチを用いて分析した研究について学会(日本計画行政学会第40回全国大会)報告を行った。この研究では,周辺に土壌汚染が存在することによって地価が下落していることについて明らかにしており,現在,投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間が開始する前の準備が比較的よくできていたこともあり,分析に使用するデータセットの構築にかける時間が少なくて済んだ。今年度は,3つの学会報告と2つの学術論文を発表できたこともあり,これまで研究はおおむね順調に進展していると思われる。今後はさらに学会報告を行い完成度を高めて,学術論文を発表していく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,これまでの研究を発展させる形で,土壌汚染対策法の執行過程に関する研究を発展させるとともに,土壌汚染の存在が周辺地価に与える影響に関する研究を進めている。 データセットの構築に関しては,研究期間が始まってから土壌汚染対策法の指定区域に関するデータが追加されていることから,データセットの構築をさらに進めていく必要がある。 分析手法については,ヘドニックアプローチに関する分析を高めていくことと同時に,行政官の行動に関する研究を進めるためには,経済学のみならず政治学等の他分野の研究についても調査を行う必要性を感じている。
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Causes of Carryover |
当初の予定より使用額が少なかったのは旅費と謝金である。旅費については,当初は海外出張を計画していたが,学会報告より研究内容の推進を優先させたため取りやめた。また,謝金については,主に英文校正を中心とした謝金支払を予定していたが,データセットの構築を中心としたアルバイト謝金の支払のみにとどまった。この分は次年度の研究において使用することを予定している。
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