2017 Fiscal Year Research-status Report
労働・住宅・結婚市場における仲介事業の役割と公的規制のあり方に関する比較研究
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17K03776
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安藤 至大 日本大学, 総合科学研究所, 准教授 (80377126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 安寧 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40336508)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 仲介事業 / 労働市場 / 住宅市場 / 結婚市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度である平成29年度は、まず日本の労働市場・住宅市場・結婚市場における仲介事業者の役割と規制内容についての整理を行った。具体的には、まず日本の労働市場における仲介事業規制について手数料規制を中心として調査し取りまとめた。また住宅市場における賃貸・売買仲介事業に関する規制を日米両国について調査した。これは両手仲介がアメリカにおいて禁止されている理由と日本において禁止されていない等が挙げられる。そして結婚市場については、仲介事業への公的規制ではなく、業界団体による自主規制の内容についての現状把握を行った。 また各市場における許可制などの参入規制、手数料規制、情報公開ルールといった個別の規制について、どのような理由で正当化されていて、どのような面で問題があるのかを理論モデルも活用することで明らかにする取り組みを行った。具体的には、北原稔(大阪市立大学)を共同研究者として、安藤はAndo, Munetomo and Minoru Kitahara (2017) “Committing to less contacts?: A note on equilibrium number of applicants with application costs,”を執筆し、北原が12月12日に大阪市立大学経済学研究会にて報告した。これは利用者が複数の仲介役に同時に依頼するか専任契約にするかといった選択が行われている実態に注目し、仲介事業者の努力選択を考慮した上での仲介事業者選択の最適行動についての研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた国内市場における規制の実態把握は適切に行うことができた。ただし規制内容の国際比較については、住宅市場のみが順調であり、労働市場や結婚市場については次年度に行うこととした。 次に理論研究については、まずは住宅市場で観察される専属専任媒介・専任媒介・一般媒介という3つの契約形態に注目して一編の論文草稿を完成させたことから順調であると考える。この研究では、既存住宅を所有者が売却したい状況を例にとると、一見すると複数の会社に依頼した方が潜在的な買い手に早く出会えるようにも思えるが、複数に依頼すると、個々の仲介会社は「費用をかけて自分が買い手を見つけてきても、他の仲介会社が先に買い手を見つけてしまうかもしれない」と考えて、努力水準が低下する効果がある。このような環境における最適行動について当該論文では検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は労働・不動産・結婚の各市場における許可制などの参入規制、手数料規制、情報公開ルールといった個別の規制について、その内容を適切に評価するための理論モデルを作成すること、またある分野での規制を他分野に移植することが可能かどうかについて、制度間の補完性にも留意した検討を行うことにしたい。 具体的には、2年目となる平成30年度には、仲介事業規制の理論分析をさらに多面的に行うこと、またこれまでに得られた結果について学会や研究会等で報告を行い、参加者からのコメント等を踏まえた改善を行うことを予定している。 また最終年度には、研究結果を対外的に積極的に公表し、加えて実務を行っている仲介事業者や規制当局との意見交換を通じて研究成果の改善と社会への還元を行う。
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Causes of Carryover |
初年度である平成29年度は、まずは労働・不動産・結婚の各市場における仲介事業について公表情報をもとにした調査を中心的に行ったこと、また既存のコンピュータを用いて理論分析や論文執筆を実施したことから、研究費を多く利用しなかった。平成30年度は、得られた成果の公表やさらなる実態調査等を積極的に行う。
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