2020 Fiscal Year Research-status Report
労働・住宅・結婚市場における仲介事業の役割と公的規制のあり方に関する比較研究
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17K03776
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安藤 至大 日本大学, 経済学部, 教授 (80377126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 安寧 日本大学, 経済学部, 教授 (40336508)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仲介事業 / 労働市場 / 住宅市場 / 結婚市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、労働市場・住宅市場・結婚市場における取引と、マッチングの仲介に関する理論研究を継続した。 その成果としては、まず労働分野としては(1)仕事と労働者のマッチングの効率改善の観点から、兼業や副業の効果を検討した。技術進歩が加速したことにより技術的失業に直面する労働者が今後増加することを踏まえて、現在の仕事が失われてから次の仕事へと移動するのではなく、スムースな労働移動を実現するためにも兼業・副業の果たす役割は大きい。(2)また働き方改革にともない居住地の選択などが影響を受ける点についての議論を行った。特に在宅勤務の普及により通勤の頻度が低下することで、比較的郊外に居住する労働者が増加することを踏まえた政策の必要性について検討した。 次に住宅分野では、(1)誰がどの地域に住むのが効率的かという視点からコンパクトシティの実現に対してタワーマンションが与える影響について検討した。タワーマンションはその内部において一部ではあるが自治体の機能を代替することから、その地方公共財提供機能については支援が必要なことを示した。また(2)現行の建築基準法における規制水準を満たしていない建築物を活用する際にどのような規制については遡及適用すべきかという議論を行なった。 次に現在進行中の研究プロジェクトとして、研修医マッチングにおいて(ルール上は認められていないものの実際には行 われている)内定の存在が参加者の行動に与える影響についての理論分析を行っている(大阪市立大学の北原稔との共同研究)。主要な結果は得られたため、現在論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1、令和2年度は、まず新型コロナウイルス感染症への対策として、職場における勤務が基本的に在宅となった。そのため講義動画の作成など準備に時間がかかり、研究のための時間を確保するのが昨年度までと比較すると難しい状況となった。また職場の研究室と同様の機器を利用することが難しく、特に年度の前半は作業に遅れが生じた。 2、次に本研究課題は、異なる複数の市場における仲介事業に着目し、特定の市場で導入されている規制手法が他の市場で活用できないかを検討する取り組みである。理論研究については在宅勤務であっても比較的これまでの取り組みを継続することができたが、現実社会において実装可能な規制をデザインする上で有用な実務担当者との意見交換については、令和2年度はそのような機会を持つことが難しかった。 3、また共同研究者との間で実施する研究に関する打ち合わせなども、その多くがオンラインとなったため、共同研究の進展に遅れが生じた。 4、一方で、これまでに予想していたよりも急速に雇用環境が変化し、飲食業界などを中心に雇用が失われるケースも増えたことから、仲介市場における制度設計が持つ重要性が増加した。このことから研究の方向性をより実用性に注目した形での取り組みに変更するという対応を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
1、現在進行中であるマッチング仲介に対する法規制の理論的検討と社会的実装の研究を続ける。なお、これまでは労働市場と住宅市場の関係についての検討を優先して進めてきたが、新型コロナウイルス感染症による社会活動の停滞により、結婚市場についての検討も進めていくことにする。令和2年の日本における出生数は、人口動態統計によると87万人強と大きく低下した。またこの傾向は、婚姻件数が前年比で-12.7%と急速に悪化したことから、今後さらに加速することが予想されている。そのため結婚の仲介が果たす役割は重要性を増している。 2、またマッチングにおける理論研究として、既存研究では扱われることが少なかった実務上の慣習について配慮した分析を行う。中でも、ルール上は認められていないものの実際には行われている研修医マッチング市場における内定の存在を題材として、そのような慣習が参加者の行動に与える影響についての理論分析を継続する。また慣習に伴う問題を軽減する政策的介入についても検討を続ける。 3、令和2年度は実施することが難しかった実務家との協議を通じて、現実に適用可能な制度設計を行う。 4、研究成果の発表については、学会発表や論文の投稿などによる経済学分野の専門家を対象とするものだけでなく、一般向けにも成果を伝えられるように配慮する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、令和2年度は自宅での研究活動が求められていたが、論文執筆や計算、またオンライン学会参加などに必要なコンピュータなどの備品を調達するのが遅くなった。年度の後半には研究環境も整ったが、成果を公開するためにかかる費用の支出が予定よりも少なくなった。特に、国内外で開催される学会がオンライン開催となり旅費や宿泊費等が不要となった。これらに対しては、令和3年度に、研究成果を報告する機会を増やすことで対応する。
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