2019 Fiscal Year Research-status Report
選挙で極端な保守またはリベラルが躍進する現象の理論的解明-浮動票が果たす役割
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17K03777
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 克也 法政大学, 経済学部, 教授 (50350210)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | group contest / effort complementarity / free riding / prize sharing rule / gerrymandering |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、多数の支持が得られず立候補も困難であった極端な主張をする政治家が、立候補をして選挙で当選するようになっている最近の現実に対し、理論的説明を与えることが目的であった。本選挙で勝つために党員が本選挙での浮動票を読み込みながら、どのような政策ポジションをもつ候補を選ぶのか、モデル分析を進めた。だが、得られた結果は実際の党員行動の説明として説得力に欠けるものであった。モデルに含むべき要素が欠けていると推測されるので、現実に対し説明力のある結果を得るために、もっと基礎的な研究にシフトして分析した。政党はグループの一つと見なせる。そこで、グループ間の競争の中で、各グループメンバーの努力の誘因の問題に焦点を当て直して分析することとした。この文脈はGroup Contestと呼ばれる。2019年度は、所属する大学から在外研修をいただき、1年間、米Boston CollegeにVisinting Scholarとして滞在した。その中でHost Professorの小西秀男教授とGroup Contestの枠組みで、グループが勝つ確率を最大にするグループ内の報酬配分は何かを明らかにし、それが実はグループメンバーの利得を最大にする配分ルールとは限らないことを明らかにした。この結果を共同論文としてまとめ、雑誌に投稿した。その後、改定要求を受けたので改定し、再提出をしたところである。この他に、前回の課題研究から引き続き、本課題研究と密接に関連をもつ、最も極端な候補者が勝つための選挙区割り(gerrymandering)を分析した論文について、共同研究者と作業を進めて、以前より雑誌に投稿していた。2018年度から2019年度にかけて改定要求を受けたので、得られていた結果をより一般的な条件でも当てはめられるように拡張する作業を進めて再提出をし、2019年度に掲載許可を得て掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題研究の当初の分析目標で得られた結果が現実の現象を説明するのに説得力を欠くために、より基礎的部分に分析の焦点を当て直したと研究実績の概要で説明をした。これは、当初考えていた理論モデルが、現実の現象に本質的に影響を与えている要素をくみ取れていないためと推測される。実りある結果が得られない事態を避けるために、分析の焦点を変えた。こうした方針転換で分析をやり直す必要があり、当初予定していた分析計画より遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究実績の概要で説明した現在投稿中の小西先生との共同論文について、もし再度の改定要求があればこれを改定し、年度内に掲載許可に漕ぎ着けたい。さらにこの共同研究から派生して取り組んでいる問題について、南山大学の上田薫先生にも加わってもらい、グループ同士が競争をするときの結果と個人間で競争をするときの結果がある条件の下では、同じ帰結をもたらすという等価定理の一種を示すことができつつある。2020年度はこれらの共同研究を進める。これらの分析を踏まえながら、group contestのモデルにおけるグループメンバーのインセンティブの問題について理論分析を深め、グループ間競争の環境がグループメンバーのインセンティブにどのように影響を与えるのかを明らかにする。これは、本課題研究の本来の分析目標であった本選挙での浮動票の存在(政党間競争を取り巻く環境)が、党のメンバーの行動にどう影響するのかという問題の基礎分析となるものである。この基礎研究で、分析結果を得る所までたどり着きたい。
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Causes of Carryover |
本課題研究で予定した経費の内訳は、英文校閲と研究報告のための旅費である。2019年度は1年間の在外研修の期間を所属大学からいただいた。所属大学は飛行機代を補助してくれたために、このための旅費を計上する必要がなかった。また、研究結果を報告するための出張については、2019年度末に新型コロナウィルスが世界的に急速に広がり、日米ともに深刻な被害が出る中で、年度末には報告できる内容はあったものの研究報告をする機会が失われた。このため、予定していた旅費支出がなかった。研究自体も目標に到達できていないので、研究期間を1年延長し、未使用額を次年度へ繰り越すこととなった。小西教授との分析は、小西教授の帰国時期に合わせる形で打ち合わせに神戸へ出向き、また上田教授を加えた分析についても名古屋に出張して打ち合わせをしながら完成させたい。今年度はこれらの旅費として支出するほか、完成した論文の英文校閲費として支出する予定である。
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Research Products
(3 results)