2021 Fiscal Year Research-status Report
選挙で極端な保守またはリベラルが躍進する現象の理論的解明-浮動票が果たす役割
Project/Area Number |
17K03777
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 克也 法政大学, 経済学部, 教授 (50350210)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | group contest / effort complementarity / free riding / prize sharing rule |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、多数の支持が得られず立候補も困難であった極端な主張をする政治家が、立候補をして選挙で当選するという近年観察された現象に対し、理論的説明を与えることが目的であった。当初は、本選挙で勝つために政党の党員が本選挙での浮動票の動向を予想しながら、どのような政策ポジションをもつ候補を選ぶのかについてのモデル分析を進めた。しかし理論モデルに含むべき要素が欠けていると推測され、得られた結果は現実に対し説明力のあるものではなかった。ほかの研究者からも同じ指摘を受け、基礎的な分析をした方がよいとの助言をもらった。そこで、現在はもっと基礎部分に焦点を絞って分析を実施している。政党はグループの一つと見なせる。グループ間の競争の中で、各グループメンバーの努力の誘因の問題に焦点を当て直してモデル分析することとした。この文脈はGroup Contestと呼ばれる。これは政党間だけでなく、民間のR&D競争など、幅広く当てはめられるモデルである。研究の体制も、結果を早く得るために、単独が基本であるが共同研究の機会も活用している。2021年度は、2020年度末にSocial Choice and Welfareに掲載された米Boston Collegeの小西秀男教授との共同論文を元に、単独でモデル分析を進めた。グループメンバーの努力の補完性とグループ内の資源配分や役割配分が、メンバーの努力の誘因に道のような影響を与えるのかについての結果が得られた。これを論文にまとめて雑誌に投稿したが、研究内容自体は評価されたものの、年度の終盤で掲載をrejectされた。年度末から現在、査読報告を元に改訂作業を進めている。また、2021年度は、小西教授との共同論文の分析を基礎に、南山大学の上田薫教授に加わってもらい、グループ間競争と個人間競争の理論的関係を明らかにする分析をさらに拡張する作業を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題研究の当初の分析目標で得られた結果が現実の現象を説明するのに説得力を欠くために、より基礎的部分に分析の焦点を当て直したと研究実績の概要で説明をした。また研究の体制も、より早く結果を得るために、共同研究の機会を求めることに改めた。これらの方針転換により、結果が得られて、2020年度末に共同論文が雑誌に掲載された。さらにこの結果から、2021年度は発展的結果も得られた。この点で分析は進められているといえる。しかし論文にまとめる段階で、得られた結果についての評価や先行研究の結果との比較について私がうまく考察をまとめることができず、論文としては失敗してしまった。このため、当初予定していた雑誌掲載まで到達できなかった。ただ学内での連続講義分の増加によって従来から受け持っている講義や学内業務を私が両立できずに年度の終わり2ヶ月近く研究が止まってしまった。また共同研究も止まってしまっている。結果、年度最初に予定していた分析計画より遅れることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究実績の概要で説明した単独で分析して得られた結果を論文にまとめる作業を終えて年度の前半のうちに雑誌に投稿したい。年度の後半には、査読の改訂要求に応えて、掲載許可まで得ることを1番目の目標としている。これとは別に小西先生と上田先生との共同研究で得られた結果をさらに発展させることが両先生と了解されているが、全く止まった状態であるので、これを進めて論文にまとめて、学会や研究会などで報告できる形に仕上げることが2番目の目標である。作業が止まってしまわないように学内業務との両立をもっと丁寧に図りたい。
|
Causes of Carryover |
本課題研究で予定した経費の内訳は、英文校閲と研究報告のための旅費である。2021年度も新型コロナウィルスの感染が増減を繰り返し、報告のための海外と国内の出張を控えたままであった。このため旅費の支出も生じなかった。これはオンライン会議の利用が進み、当初計画していた対面での研究会や学会に参加する機会は全くなかったことによる。得られた結果を論文にまとめたあとで英文校閲を利用し、この支出は予定通りであったが旅費がない分、予定額には到達しなかった。このため次年度使用額が生じた。2022年度は研究実績の概要や今後の研究の推進方策のところで説明したように、うまくまとめられなかった論文の書き直しの作業を進めている。これらが仕上がり次第、英文校閲に出す予定であるのでその料金支払の支出が見込まれる。加えて、今年度末にかけて、新型コロナが落ち着いて対面での研究会や学会開催が可能になると期待しているので、研究報告の機会を捉えて報告のための旅費も支出することを見込んでいる。
|