2018 Fiscal Year Research-status Report
資産・所得が個人の選好や行動に与える影響に関する実証研究
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17K03783
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
花岡 智恵 東洋大学, 経済学部, 准教授 (30536032)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 選好 / 流動性制約 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
貧困者と非貧困者の行動は、なぜ違うのか。従来の研究では実証結果が混在しており未解明な点が多い。そこで本研究では、貧困者と非貧困者の行動が異なる要因として①個人の選好(時間選好・リスク選好)と②流動性制約に着目する。各要因が行動に与える影響を検証することで、貧困者と非貧困者の行動の違いの背景にあるメカニズムを検証する。今年度、分析に使用した主なデータは、ミシガン大学「健康と引退に関する調査」(1992~2012年)である。このアンケート調査を利用し、公的年金受給者を分析対象として、無作為に決定するアンケート調査日と年金受給日との間の日数を流動性制約の外生的なバリエーションとして利用した。さらに、個人の選好を直接計測した項目を用いて選好パラメータを計測する。これらのデータを使用して、外生的な流動性制約が個人の時間・リスク選好パラメータに影響を与えているかどうかを推定した。昨年度は、データセットの作成、および、外生的な流動性制約が個人の時間・リスク選好パラメータに影響を与えているかどうかの推定を行った。今年度は、引き続き、外生的な流動性制約が個人の時間・リスク選好パラメータに影響を与えているかどうかの推定を行った。また、貧困者・非貧困者の違いを検証するために、既存研究を参考に多様な貧困基準を用いて貧困を定義し、サブサンプルにわけた分析を行った。これらの分析結果にもとづき、貧困者が非貧困者と行動が異なる原因が、時間・リスク選好によるものか、それとも流動性制約によるものかの検討を行った。メカニズムを探るために外生的な流動性制約が認知能力に与えるや、感情に与える影響についても検証を行った。さらに、結果の頑健性を確認するためにさまざまな条件でサンプルセレクションを行った際に、一致した結果が得られるかどうか検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
推定と頑健性の確認は本年度の計画であり、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
分析結果が出そろったため、論文のアウトラインを作成し、研究論文を仕上げる。学術雑誌への投稿準備を行う。本申請の報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
昨年度、当初の予定では海外の研究協力者を招聘し研究会を行う予定であった。しかし、申請者本人が大学を異動した直後で学務に追われ、研究会を実施することができなかった。その分の外国旅費が次年度使用額として残っている。研究会は平成31年度に実施予定である。
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