2017 Fiscal Year Research-status Report
An economic theory of grandparents and the application to policy evaluation
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17K03784
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四谷 晃一 同志社大学, 経済学部, 准教授 (10351280)
北浦 康嗣 法政大学, 社会学部, 准教授 (90565300)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者 / 年金 / 出生 / 教育 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,これまでの研究成果の発表と,家族内部の意思決定を考慮した理論モデルの構築を並行しておこなった. 成果発表の具体的な内容は以下の通りである.(1) 国債管理を厳格化することにより,経済成長が促されるとともに出生率が上昇することを示した論文を,国際学会で報告した(Association for Public Economic Theory).この論文は現在,専門誌に投稿中である.(2) 政治家が,市場の情報を十分利用せずに政策競争をおこなう場合,Markov完全均衡と比べ,再分配政策が過大となることを示した論文を,国内および国際学会で報告した(日本応用経済学会,Western Economic Association International).この論文は,大学の研究所のディスカッションペーパーとして公表している.また,投稿に向け,現在修正作業を進めている. 理論モデルの構築については,基本的に,研究代表者,研究分担者が個別に研究を進めた.進ちょく状況を把握し,各研究分野の知識を共有する目的で,年度末に研究会を開催した(Nagoya Macroeconomics Workshop).当初の計画通り,宮澤は祖父母の育児協力について,北浦は労働供給について,四谷は教育について研究を進めている.それぞれの研究に共通するのは,家族内の時間配分に関する意思決定である.教育と養育に関する親の時間配分,努力と余暇に関する子の時間配分,そして,時間移転に関する各家族のインセンティブについて意見を交換した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮澤(代表者)は,高齢世代と若年世代の政治参加の相違に注目して,各国の再分配政策の相違を説明するモデルを構築した.年度前半は,確率的投票モデルの理解を深めることと,関連する先行研究のサーベイをメインにおこなった.後半は,理論モデルを構築し,論文を執筆した.既存研究で専ら利用されているMarkov完全均衡と,政治家の市場予測が限定的である場合の均衡を比較することにより,再分配政策に関する国際間の相違をある程度説明することができた. 四谷(分担者)は,大学進学率と経済成長率の間に負の相関がある点に注目し,成長モデルを用いて,高い進学率と低い技術進歩率が共存する均衡を導出した.モデルの特徴は,(1) 一般知識と専門知識という異なる知識,(2) 知識にもとづく2つの高等教育,(3) 就学期の余暇に対する外部性である. 北浦(分担者)は,児童労働を含む成長モデルを用いて,条件つき現金給付(Conditional cash transfer, CCT)が,成長率と所得格差にどのような影響を及ぼすのかを分析した.CCTは,教育投資のインセンティブを付与することで長期的な経済成長を促すが,短期的には所得格差を拡大させる可能性があることを理論的に示した. 進捗状況の確認と情報共有のため,定期的に研究会を開催した(Nagoya Macroeconomics Workshop 10回,Doshisha Economics Workshop 7回).
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の当初の予定は,年金・公教育・児童手当に関する政策シミュレーションをおこなうことである.年金については,初年度に,宮澤(代表者)が一定の結果を導出している.政治家の市場予測が正確であるケースと限定的であるケースを比較すると,限定的である方が,政治的に支持される年金の規模が大きくなる.数値分析の結果,先進国における年金の規模の差異をある程度説明することができた.しかし,ベース・モデルの構造は,家族内部の意思決定を組み込むという当初の想定とは異なっている.したがって,より精緻なベース・モデルを構築する必要がある. 児童手当については,初年度に北浦(分担者)が上述のCCTの政策効果を分析している.CCTは,子どもの就学時間を増やすとともに,一定の条件のもとで,出生率を引き上げる効果を持つことが確認されている.また,政策の短期効果は,所得階層により異なることが示されている.ただし,ベース・モデルは途上国を念頭に置いたものであり,当初のアイディアが十分に反映されているとは言えない.今後は,子どもの努力や祖父母の育児協力といった要素を追加して,ベース・モデルを改良する. 公教育については,初年度に四谷(分担者)が開発したモデルをベースとして数値分析を進める. 基本的には,初年度と同様に,当初の分担にもとづいて個別に研究を進める.また,進捗状況の確認と情報共有のため,京都と名古屋で定期的に研究会を開催する(年20回程度).
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