2018 Fiscal Year Research-status Report
市町村財政の効率性を高める都市の空間要素を考慮した自治体間連携に関する経済分析
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17K03787
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
井田 知也 近畿大学, 経済学部, 教授 (50315313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 宏 大分大学, 経済学部, 准教授 (30381023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自治体間連携 / 都市の空間要素 / 市町村財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口減少時代を迎える我が国では、少子化による経済規模の縮小から歳入増加が期待できず、市町村にはさらなる歳出削減を中心とした財政の効率化が求められる。この目的を果たす体制改革として自治体間の「集約」と「連携」がある。前回の科研費基盤研究(C)[課題番号26512009]は前者を対象とした分析、今回はそれを考慮した後者の研究である。具体的には、本研究では市町村データに基づく財政効率性を高める自治体間連携の分析から、その経験が乏しい市町村に関連政策を立案する上での基礎資料を提供する。 本年度は、まず基礎研究として、一定の日常生活、医療・福祉、就労等が可能な都市圏を単位とする自治体間の機能分担が重要な日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community)に係るヒアリングを、秋田県あきた未来創造部で実施した。同構想の実現を目指す秋田県での今回の調査結果は、その現状と課題の理解を深め、続く理論・実証分析および政策提言を充実させる基礎資料となった。 次に、理論・実証分析のひとつとして、財政効率性を高める自治体間連携の規模を分析した。具体的には、早期から広域化が進む消防サービスを事例に、既存の行政区域を超えて消防本部が管轄すべき人口規模を分析した。その結果、最適な管轄人口は約55~106万人と消防庁が目標とする30万人以上を大きく上回った。つまり、消防庁が目指す広域化が実現しても、その規模は十分でないことが分かった。第28次消防審議会「消防の広域化及び消防の連携・協力に関する答申」でも消防の広域化の下地として連携・協力を位置付けられており、同研究は前出規模の広域化が実現しなければ、消防力の強化には引続きその推進が必要であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究事業として、①GISデータ等に基づく都市の空間要素に係る複数の新指標の再構築、②自治体間連携の要素を反映した歳出関数の再構築、③歳出関数に反映する自治体間連携の要素を捉えるための国内現地調査、を予定していた。まず、①として平成29年度に、Galster et al (2001 Hosing Debate Policy)等が示す都市空間の特性を基準に、当初予定を少し変更したが続く実証分析で実用可能な代替的な指標を作成した。また、同年度には②として、不完全な部分も残るが平成30年度以降の実証分析を推進する上で基盤となる理論モデルも導出した。さらに、平成29年度に未実施であった③は、平成30年度に秋田県あきた未来創造部でヒアリング調査を実施することができた。 次に、平成30年度以降の研究事業として、④理論分析で再構築した歳出関数の種類別・規模別・分野別推計、⑤市町村財政の効率性を高める自治体間連携に係る政策提言の国際学会報告、⑥自治体間連携が進むスウェーデンを中心とした海外現地調査の実施、を予定していた。まず、平成30年度には、消防を中心に自治体間連携の現状について文献調査を行った。その結果、消防は他分野より自治体間連携が早期から進んでおり、広域行政により財政効率性が高まる分野であることが推察できた。なお、④の目的は、財政効率性を高める自治体間連携の種類・分野・規模を示すことである。したがって、この調査を通じて同研究事業の目的の一部は達成できたと考える。さらに、同年度には前述の通り広域行政の進展が顕著な消防を事例に、消防本部が既存の行政区域を超えて管轄すべき人口、すなわち、財政効率を高める自治体間連携の規模も分析できた。そのため、④の研究目的の一部をさらに満たすことができた。以上の研究実績から判断すると、予定していた研究事業は概ね進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画中の各研究事業の中で、⑤市町村財政の効率性を高める自治体間連携に係る政策提言の国際学会報告の一部は平成31年度に実施予定である。具体的には、タイ・バンコクにおいて2019年7月25~27日にChulalongkorn University で開催される16th Pacific Regional Science Conference Organizerで関連する口頭報告を行う。同国際学会より口頭報告の採択を受けており、その実施は可能と考える。他方、⑥自治体間連携が進むスウェーデンを中心とした海外現地調査については、同研究事業の窓口であるWilhelmsson氏との調整が困難な状況にありその実施は不透明である。ただ、同研究事業の目的は、自治体間連携に係る政策提言の充実であるため、その実施が難しい場合は文献調査および平成31年度に参加予定の前出の国際学会などにおける海外の研究者との積極的な意見交換を通じてその補完を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた統計ソフトのアップデートの遅れから、その使用を前提としたパソコン購入や英文論文の校正等が延期となり、次年度使用額が発生した。しかし、同アップデートは今年度に行われる予定であり、上記に関連する予算は平成31年度に執行可能と考える。他方、自治体間連携が進むスウェーデンを中心とした海外現地調査が実施に至らなかったことも、次年度使用額が生じた理由でもある。同研究事業の実施は先方との調整の関係から不透明な状況であるため、もしその実施が困難となった場合、海外の研究者との意見交換から同研究事業の目的を代替的に達成するように、国際学会に参加して関連予算を執行する。
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Research Products
(3 results)