2020 Fiscal Year Research-status Report
教育・起業投資と最適課税分析:税収制約下で成長と公平性の両立は可能か?
Project/Area Number |
17K03788
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 禎友 関西学院大学, 経済学部, 教授 (30330228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 亮 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90324855)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 最適課税 / 教育投資 / 経済成長 / 技術進歩 / 定常成長 / ナイフエッジ性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の小川は、非協力関係の下で教育投資レベルを決定し、かつ外部の教育施設を利用できる状況において、一定の税収を確保するという制約下で厚生レベルを最大にする最適課税問題を分析した。本研究では、最初に子供の数を選択して、その後に子供への教育投資レベルを非協力的に決定するモデルにおいて、物品税、所得税、子供補助/税、外部の教育施設利用に対する補助/税に関する最適課税公式を導出して、その税構造を明らかにした。この研究成果をKwansei Gakuin University, Discussion Paper として出版した。また外部教育施設の効果をより明らかにするためにいくつかの仮定を追加して、より直観的な最適課税公式を提示した研究結果をTOKYO CENTER FOR ECONOMIC RESEARCH, Working Paper として出版した。 研究分担者である堀井は、労働など、様々な生産要素の生産性を上昇させるための投資(教育投資含む)を内生化したモデルについて引き続き研究を行った。最終版に近い内容を査読付き国際学会SURED 2020 - Monte Verita; Conference on Sustainable Resource Use and Economic Dynamics に投稿し、採択され、報告を行った。また、このような経済成長の持続可能性について、一般向け講演(オンライン中継、400名以上参加)及び、研究者向けのワークショップでの講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、Covid-19の発生や、それによる緊急事態宣言等の対応のため活動が制限され、研究進捗に大きな影響が出た。また、研究代表者の小川は日本経済学会総務理事(大会担当)として、研究分担者である堀井は所属部局の部局長として、Covid-19の対応に時間を多く割かざるを得ず、研究へのエフォート投入を低くせざるを得なかった。次年度(2021年度)以降、状況の改善を期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である小川は、税関数をより一般化した拡張モデルを分析する予定である。具体的には、これまでの結果は線形所得税の下で導出されたものであった。2021年度は非線形の所得税体系を考慮した非協力投資決定モデルでの最適所得税分析を行う。現実の所得税は非線形なので、導出される結果は有益な政策提言となるだろう。 研究分担者堀井は次の拡張分析を予定している。既存の成長モデルは、下記のような技術と生産の関係についての制約を課している。「集計的生産関数がCobb-Douglas型である場合を除き、長期的な技術進歩はすべて「労働増加的」でなければならない。」通称、宇沢の定理と呼ばれる(Uzawa 1961 RES)。しかし、マクロ生産関数の資本・労働の代替弾力性の推定値は1以下であり、Cobb-Douglas型生産関数は当てはまらない。また、現実の技術進歩は、労働生産性の上昇以外にも様々な形態をとっている。例えば、近年の世界経済の成長は情報技術の発展に大きく依存しており、その背景にはコンピュータや通信インフラなどの性能の向上があると考えられている。事実、コンピュータ等情報機器の品質調整済み価格データは急速に下落しており、同じ実質投資額でより多くの処理能力が得られる「資本増加的技術進歩」が起こっていることを示している。そこで、実証結果と整合的かつ、長期成長を説明する理論を構築する。2020年度はCovid-19対応のため活動が制限されたことから、2021年度は研究を前進させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は、Covid-19の発生や、それによる緊急事態宣言等の対応のため活動が制限され、研究進捗に大きな影響が出た。また【現在までの進捗状況】で説明した通り、研究代表者の小川は日本経済学会総務理事(大会担当)として、研究分担者である堀井は所属部局の部局長として、Covid-19の対応に時間を多く割かざるを得ず、研究へのエフォート投入を低くせざるを得なかった。さらに、研究代表者の小川は、関西学院大学での個人特別研究費(2020年度)を取得したことに伴い支出が節約できた。2021年度は学会報告・参加費、英語論文の添削代などを中心に活用する。
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Research Products
(7 results)