2021 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける最低賃金上昇の影響評価:自然実験を利用した分析
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17K03794
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
東方 孝之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 海外研究員 (70450533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 最低賃金 / 地方分権 / インドネシア / 影響評価 / 雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアでは2001年の地方分権制度導入をきっかけに、州の下の県・市地方自治体レベルで最低賃金水準に変動が生じるようになった。本研究の目的は、この最低賃金水準の変動が企業や労働者・家計の厚生水準(就業状況・賃金水準)に与えた影響を探ることにある。分析にあたっては、まず、企業や労働者の個票データからその位置情報の確認を進める。その際には、特に地方自治体の境界域に近接するサンプルに注目した確認作業を行う。また、地方自治体や村・区(最末端の行政単位)レベルの情報とも組み合わせてパネルデータを構築する。次に、地理的に隣接し、かつ、最低賃金引き上げ水準が異なる地域間の比較や、地方自治体の分立、そして地方首長選挙の導入、といったイベントを利用した分析を試みる。 2021年度は、第一に、地理情報を用いて、インドネシアにある約500の地方自治体の境界線に隣接する村・区を識別し、その村・区に立地している製造業企業の確認作業を進めた。次に、2020年度末に執筆した論文(地方自治体レベルでの位置情報をもとに、製造業企業パネルデータを使って最低賃金上昇の雇用への影響を探った論文)については、投稿先から修正が求められたため、コメントに対応して再投稿したところ掲載に至った。最後に、2020年12月の地方首長選挙の村・区レベルでの投票データが公開されたことを受けて、そのダウンロード作業をすすめるとともに、2019年総選挙結果などとのマッチング作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初利用する予定であったデータの購入が2019年度までできなかったため、別途データセットの構築作業が必要となり、計画に遅れが生じた。また、2020年度以降には、当初予定していた現地調査が実施できなかったことによりデータ収集作業に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの地方自治体レベルの位置情報を用いた分析から得られた推計結果については、まだバイアスが生じている可能性が残されている。そこでより厳密な因果関係を明らかにすべく、地方自治体の境界線に隣接する村・区レベルの位置情報を用いた分析を試みる。具体的には、境界線をはさんで異なる地方自治体に属する一方で、地理的にはきわめて近い位置に立地している製造業企業の情報や村・区レベルのコミュニティ情報を使った分析により、最低賃金の違いが雇用にもたらした影響を探る。また、その分析結果をDiscussion Paperにまとめた上で査読誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた現地調査が新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限から実施できなかったことを受けて、大規模家計調査結果の購入に一部を充てた。これにより残りが次年度へ繰り越されることになった。
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Research Products
(1 results)