2017 Fiscal Year Research-status Report
成熟経済でのバラッサ・サミュエルソン効果の有効性-労働市場の構造変化との関連から
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17K03808
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
藤井 隆雄 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80547216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 洋一 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (90239062)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 為替レート / バラッサ・サミュエルソン効果 / 労働市場 / 財政政策 / 労働生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際金融における実質為替レートの基礎理論であるバラッサ・サミュエルソン理論を日本及び各国のデータを用いて実証的に検証しようとするものである。その際、特に労働市場との関連に着目しようとしている点が本研究の特色である。もちろん、実質為替レートの動きはバラッサ・サミュエルソン効果が示唆する労働生産性という供給側だけで決まるものではなく、需要側の側面も重要である。よって、供給側、需要側の両面に目を向けた多面的な検証が必要である。 平成29年度は、上記の点を踏まえ大きく分けて三つのことを行った。第一に、データ構築である。R-JIPデータベースを用いた都道府県レベルのもの、いくつかの国のセミマクロデータを用いたものを構築した。第二に、計量経済学的手法の調査である。労働市場に着目しようとした場合、特に構造変化の問題が重要であると考える。本研究では、パネルデータを用いた閾値回帰モデルの使用を考えているが、パネル閾値回帰モデル(panel threshold regression model)の手法の進展は著しい。よって、分析手法について検討した。第三に、需要側という意味では、政府支出の問題は重要である。そして、実質為替レートと政府支出との関連を考える上では為替制度の違いも重要な論点である(例えば、Miyamoto et al.(2017))。そこで、本研究のテーマを広くとらえ、為替と財政という面から、為替制度と財政規律の研究(共著)を進めた。その成果は神戸大学のディスカッション・ペーパー(江阪・藤井(2018, No.1813)、江阪・藤井(2018, No.1814)の2本の論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、三つのことを本年度の達成目標としていた。第一に、先行研究のサーベイ、第二に、各国のデータ収集・整理、第三に、既に行った研究(藤井・松林(2016)やFujii and Matsubayashi(2016))の手法の精緻化である。この内、第二、第三でやや遅れている状況である。具体的には、業種別のセミマクロデータを用いた場合の労働生産性の構築が当初の予想以上に困難であることが判明したことである。また、分析のためには少なくとも二カ国で用いる業種のカテゴリーを合わせておく必要があるが、各国によって業種の定義が異なる場合がある。そのため、整合的なデータセットを構築することを再検討する必要が生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は国ごとにセミマクロのパネルデータを用いた分析を行う予定であったが、データ構築の難しさがある点もわかった。そこで、クロスカントリーパネルデータを用いた分析を行うことを考えている。このデータについては、まだ構築していないため、その構築から進める必要がある。ただし、これについては、データの構築にセミマクロデータの構築時のような技術的困難さは伴わないと予想されることから実証結果は出てくるものと予定している。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が予定より少なかったためである。次年度の消耗品及び書籍の購入に充てる。
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