2017 Fiscal Year Research-status Report
金融証券市場ネットワークの相互連関性を考慮した信用リスク計量分析
Project/Area Number |
17K03813
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
菅野 正泰 日本大学, 商学部, 教授 (00551061)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 信用リスク / 相互連関性 / デフォルト連鎖 / ネットワーク理論 / 株式持ち合い / 企業融資リスク / 期待ショートフォール / コピュラ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、まず、本邦株式市場の銀行・保険会社・上場事業会社間持ち合いネットワークにおける信用リスクエクスポージャーの相互連関性を評価した。リスク評価尺度はバーゼル規制で融資リスク評価に使われるPD/LGD方式とRORA(リスクアセット当期純利益率)であり、ネットワーク構造の評価尺度は中心性指標である。PD/LGD方式によると、リスクの掛け目による簡易法よりも1.5倍から5倍の信用リスクの増加に繋がることが判明した。加えて、事業会社は銀行・保険会社との取引関係上、両者に劣後したリターンに留まり、逆に平均的なリスクは、両者の1.67倍に達することが明らかになった。まとめた論文は、国際学術誌(Risk Management,SpringerFinance)に採択された。 また、本邦上場事業会社全社間の株式持ち合いネットワーク分析を行い、デフォルトと5つの中心性指標の関係性について分析した。5指標のうちデフォルトにプラスに寄与する指標とマイナスに寄与する指標があることが判明し、その理論的背景をネットワーク理論の観点から整理した。まとめた論文は、国際学術誌に投稿中である。 更に、本邦上場事業会社全社の金融機関別借入残高のデータセットを用いて、信用格付推移リスクの計量化を行った。資産相関はコピュラ関数で計測し、ポートフォリオリスクの計測には、VaRと期待ショートフォールを適用した。加えて金融システム全体の信用リスク量を計測した。グローバル金融危機直後の状態にストレス負荷した格付推移行列を用いたストレステストでは、企業デフォルトが多数発生し、ネットワーク構造が格段に粗くなる事象が予測された。まとめた論文は、国際学術誌に投稿中である。 結果、その他の成果も含め、国際学術誌に1編採択・2編投稿中、国内学術誌に1編採択、書籍2冊出版、および学会発表4件の成果を挙げた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、株式の持ち合い等、証券の相互保有や金融取引の相互連関性がもたらす信用連鎖の分析を当初予定しており、この観点では、本邦株式市場における株式持ち合いネットワークに関する研究を実施し、成果物として2編の論文を作成した。そのうち1編はJCRのインパクトファクター付国際学術誌に採択され、残り1編も国際学術誌に投稿中の段階にある。 更には、平成30年度の課題として当初予定していた、企業融資ネットワークを介した信用連鎖のストレステストについて、平成29年度に先行着手し、一定の研究成果を得たことから、論文1編を作成し、国際学術誌に投稿中の段階にある。 以上より、当初の予定通り研究が進んでいると判断されるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文の受理を目指し、必要に応じて改訂作業を行う。また、REIT市場の分析とシンジケートローン市場の分析に着手する。更に、ネットワーク数理などの理論を応用し、新たな信用連鎖モデルの開発に取り組む。
|
Causes of Carryover |
数値計算ソフトMATLABのバージョンアップのための資金を次年度に持ち越したため。次年度直ちにMATLABの購入代金に充当する。
|
Remarks |
国際学会APRIAの2017年年次大会において、発表論文(Bank-insurer-firm tripartite interconnectedness of credit risk exposures in a cross-shareholding network)が、発表申し込み本数約150編の中で最優秀論文賞(Harold Skipper Best Paper Award)を受賞した。
|
Research Products
(10 results)