2017 Fiscal Year Research-status Report
Supply Network Formation and Resource Allocation by the Financial Market
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17K03818
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70423043)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 企業間ネットワーク / リレーションシップバンキング / 情報生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
融資先企業間の取引関係が、融資条件に与える影響について分析を行った。データは、2014年調査の企業間取引ネットワークと各企業のメインバンク情報(いずれも東京商工リサーチ)を用いた。ある企業の直接の仕入先・販売先のうち、当該企業とメインバンクが同じ先が占める比率が高いほど、市販の信用評点に代表される公開情報以外の、非公開情報が金利に対して影響力を持つ傾向が強いことが確認された。理論モデルに照らせば、これは、メインバンクが融資先の取引先から非公開情報を得て、融資判断に活用していることの証拠であると解釈することができる。たとえば、仕入企業と納入業者が同一のメインバンクに決済口座を維持し、メインバンクと緊密に情報交換をしているのであれば、リアルタイムでの受発注情報、あるいは代金支払い等の資金繰りの情報をいち早く入手し、これを融資判断に活用することができる。上記の傾向は、企業、あるいは企業の直接の取引先の様々な属性(財務指標、株式保有関係など)をコントロールし、銀行固定効果、あるいは銀行支店固定効果を含む固定効果モデルにより銀行の属性をコントロールした回帰分析でも明確に表れる。また、この傾向はとくにメインバンクが地方銀行である場合に顕著であることも明らかとなった。 この結果のインプリケーションは以下のとおりである。取引先と同じメインバンクを使うことで非公開情報が有効活用されるようになる傾向を企業側が利用しているとすれば、公開情報ではそれほど優良には見えないが実際には優良である企業が、取引先と同じメインバンクを活用することで金利コストを節約することができるので、取引先と同じ銀行をメインバンクとして使うようになる。結果として、メインバンクの融資ポートフォリオは、特定の企業ネットワークに属し同様のリスクを持った企業に偏りがちとなり、リスク分散が十分には効かなくなる恐れがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業間ネットワークが融資金利に与える影響に関する理論モデルの大枠はすでにできている。また、データ収集に関しては、銀行の融資ポートフォリオのリスクの度合いを計測するための指標計算は概ね完了している。企業間取引ネットワークと企業財務データ整理については、1年分については完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の二方向で研究を推進していく。 1.企業間ネットワークの形状が、金融機関のリスクに与える影響の計量分析 2.企業間ネットワークの形成過程と、銀行融資ポートフォリオの形成過程の計量分析 いずれの分析においても、複数時点の企業間ネットワークデータを用いることが求められるため、現在1時点分のみが用意できているネットワークデータを、複数時点拡張することを最優先に進める。その後、上記1、2の分析を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会報告の一部で不採択があったため、次年度使用額が生じた。今年度の国際学会報告用の旅費にこれを充てる予定である。
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Research Products
(1 results)