2017 Fiscal Year Research-status Report
インドのNGOがマイクロファイナンスの地域浸透と機能、女性の経済力に与えた影響
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17K03823
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
木村 正信 金沢星稜大学, 経済学部, 教授 (50339983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JOSHI Abhay 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (30587671)
西村 めぐみ 共立女子大学, 国際学部, 専任講師 (20641286)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロファイナンス / SHG |
Outline of Annual Research Achievements |
インドのマハラシュトラ州オーランガーバード市マスラスワダ地区にあるDhangaon とWahegaonという2つの農村で実際に行われているマイクロファイナンスプログラムの実態を調べその効果を分析した。本研究の調査対象のマイクロファイナンスプログラムは現地NGOのInstitute for Integrated Rural Development (以下IIRD)によって1990年代から取り組まれものである。IIRDはSHGと呼ばれる30人くらいの女性グループを構成し、メンバー一人ひとりに毎月の貯蓄を義務づけ、グループリーダーがそれをまとめて商業銀行に預金する。そして、メンバーからの預金とIIRDからのグループ貸付金を原資に、SHG内部で少額資金を融資し合うというのが、IIRDのマイクロファイナンスプログラムの大きな流れである。 分析のためのデータにはDhangaon とWahegaon の123人の女性からのアンケートによって集めたものを使用した。アンケートは43項目からなり、今回の研究で使用するのは主に年齢、学歴、家族構成、職業といった女性の属性に関わる項目と、資産や所得といった女性の経済力に関わる項目である。 傾向スコア法や回帰調整法、操作変数回帰分析法によって、マイクロファイナンスの利用の有無によって、家計所得に差異が見られるのか検証したところ、利用している女性の方が利用していない女性より家計所得が大きいことがわかった。しかし、その一方でパフォーマンスの高いSHGと低いSHGの両方が存在することも判明した。なぜ、同じような地域で同じマイクロファイナンスを利用しながらも、このような違いが生じるのか、その原因が何であるかを今後調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、インドのマハラシュトラ州オーランガーバード市マスラスワダ地区にあるDhangaon とWahegaonという2つの農村で123人の女性を対象に、43項目(年齢、学歴、家族構成、職業といった女性の属性に関わる項目と、資産や所得といった女性の経済力に関わる項目)にわたるアンケート調査から収集したデータを使って分析することができた。なお、アンケート調査に対しては現地で唯一マイクロファイナンスプログラムを実施し、多くのSHGを組織している、NGOのInstitute for Integrated Rural Development(IIRD)と連携して行ったことも、申請書に書かれた通りである。「研究発表」の項目で改めて詳細を記載するが、先に記載した「研究業績の概要」についてに2017年度の日本マクロエンジンアリング学会の年次研究大会(東京日本工業大学)とEuropean Microfinance Platform 5th European Research Conference on Microfinance、University of Portsmouth, United Kingdomにおいて中間報告した。2017年度中に執筆が完了する予定であったが、現在それらをまとめたものを文書化し、学術雑誌に今年度中に投稿する予定である。以上のことから研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は我々がDhangaon とWahegaon の両村で123人の女性からのアンケート調査に基づいて、傾向スコア法や回帰調整法、操作変数回帰分析法によって、マイクロファイナンスの利用の有無によって、家計所得に差異が見られるのか検証した。その結果、マイクロファイナンスを利用している女性の方が利用していない女性より家計所得が大きいことがわかった。しかし、その一方でパフォーマンスの高いSHGと低いSHGの両方が存在することも判明した。その原因が何であるかをさらに追及するため、2018年度には再度、現地に赴きアンケート調査やIIRDへのヒアリングを実施する予定である。アンケート調査項目としてソーシャルキャピタルと関連しているものを追加する。ソーシャルキャピタルとは「社会的信頼」、「互酬性の規範」、「ネットワーク」の3つの社会組織の特徴を示している概念で経済面での効果も大きいとされている。本研究で検証される仮説としては、「SHGという組織ごとにソーシャルキャピタルの差があるため、それがマイクロファイナンスのパフォーマンスの違いも生じさせている」が考えられる。 2017年度の分析に用いたアンケート調査にもソーシャルキャピタルを計測するために使用可能な項目が一部含まれている。しかし、充分とは言い難いため、アンケート項目を追加して、前回アンケート調査したのと同じ女性に対して今年度実施する。アンケートの実施にはIIRDとも連携して行う。
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Causes of Carryover |
0より大きい理由は、2017年度に研究分担者に転出があり、転出先の業務などのため出張が困難になり、予算の執行が遅れたことによる。2018年度には再度、インドで調査する必要があるため、その旅費に充当する計画である。
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