2018 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a new decision model under ambiguity and its application to asset valuation
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17K03825
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
岩城 秀樹 京都産業大学, 経営学部, 教授 (40257647)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不確実性下の意思決定 / 曖昧性 / EUUP / 保険料計算原理 / ポートフォリオ選択 / 非期待効用 / 経済均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
一. 前年度から継続して行った研究成果を``Risk Exchange under EUUP" という論文にまとめ、7月末シンガポールで開催されたAsia-Pacific Risk and Insurance Associationの22nd Annual Conferenceで発表した。本論文はExcellent paperに選ばれたため、学会報告とは別にインタビューを受け、ホスト校を通じてその模様がyoutube(https://www.youtube.com/watch?v=GBAW1DaQ4yU&t=132s)にアップされている。本論文では、Izhakan,Y.(2017) J.Math.Econ.の新たな曖昧性下での意思決定基準であるEUUPを用いて、保険対象の損失の生起確率が曖昧(不確実)である状況の下で純粋交換経済モデルの保険の需給均衡をもとめ、曖昧性が均衡保険料と保険需要に与える影響を考察した。本論文は国際学術誌に投稿し、現在、改訂要求を受けて、改訂中である。 二.本年度新たに行った研究成果を``An Ambiguity Measure under EUUP and Its Application to a Portfolio Problem"という論文にして、9月下旬ドイツ、ニュルンベルクで開催されたEuropean Group of Risk & Insurance Economistsの45th Annual Seminarで発表した。本論文は先述のEUUPの下で、意思決定者が利益に対して曖昧性回避かつ損失に対して曖昧性受容という状況下での曖昧性の大きさを測る新たな測度を考案して、その測度を用いて曖昧性の大きさが投資家の最適資産ポートフォリオに与える影響を考察したものである。まだ、論文が粗いため、校正の後、然るべき国際学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、一、将来起こり得る結果が不確実で、起こり得る結果や結果の生起確率が一意に定まらないという曖昧性下での意思決定について、研究代表者がこれまで構築してきた意思決定理論モデルを、より現実適応性を高めるように発展させること、加えて、二、従来から得られている 実証結果と整合的な新たな理論モデルを構築すること、そして、三、それらの一般的なモデルの枠組みの下で曖昧性が資産価値に与える影響を比較静学的に分析し、その分析結果を証券市場や保険市場の分析に応用して実証可能な経済学的含意を得るとともに、構築した意思決定モデルの現実との整合性を確かめることである。 この研究課題目的に照らして、研究実績の概要で述べた実績状況を勘案すれば、研究進捗は概ね順調に進展していると思われる。 なお、本課題応募時の当初の研究計画では、「平成30年度以降、曖昧性下の双対モデルおける既知の未解決問題の解決方法についての考察、および新たな曖昧性下の意思決定モデルの開発について、引き続き、それらを深化させていく。」として、曖昧性下の双対モデルについて研究を行うことが記述されていたが、その後、Izhakan,Y.(2017) J.Math.Econ.において提唱されたExpected Utility with Uncertain Probability (EUUP)の方が、曖昧性下の双対モデルよりも、意思決定基準として、汎用的であるという見解をもったため、本年度、次年度では、曖昧性下の双対モデルを取り上げる研究は中止し、代わりにEUUPを用いて既知の未解決問題の解決方法についての考察することに研究を切り替えている。この研究に関して、本年度は、研究実績の概要で述べた実績状況から、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
一、研究実績の概要の一で記述した論文``Risk Exchange under EUUP" が投稿先の国際学術誌より改訂要求を受けているので、次年度の早期に改訂を行い、再投稿を行う。 二、一と並行して研究実績の概要の一で記述した論文``An Ambiguity Measure under EUUP and Its Application to a Portfolio Problem"を完成させ、英文校正を経た後、然るべき国際学術誌に投稿する。 三、現在、新たな研究プロジェクトとして、曖昧性下での意思決定モデルを用いて、従来から実証研究を通じて指摘されているDisposition Effectを説明する新たなモデルを構築し、その妥当性を数値的に確かめるということを開始している。Disposition Effectとは、経済主体は保有資産についてその価格が上昇した場合には資産を売却するのに比して、価格が下落した場合には、売却を躊躇するという現象のことである。Disposition Effectは、金融・ファイナンス分野では知られている現象であるが、従来の期待効用理論では説明できないため、パズルとして扱われていた。2000年代後期より、この現象を説明するものとして、Prospect理論が用いられてきたが、その説明力は部分的である。そこで本プロジェクトでは、確率事象に曖昧性を導入し、従来の経済実験で確かめられているように利益に対して曖昧性回避かつ損失に対して曖昧性受容という経済主体を仮定し、曖昧性下での意思決定モデルを用いて、Disposition Effectの解明を試みる。数値を用いた予備考察では、従来のProspect理論より曖昧性を導入したモデルの方が説明力が高くなることが確かめられており、本プロジェクトの遂行によって得られる成果は学術的に大きな貢献をもたらすと思われる。
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Research Products
(6 results)