2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K03828
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
中島 清貴 甲南大学, 経済学部, 教授 (00367939)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非伝統的金融政策 / Search for Yield / 銀行による過度なリスクテイキング / VAR / 関係特殊資産 / リレーションシップバンキング / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
金利を政策変数とする従来型の伝統的金融政策の効果を測定する計量的方法については国内外の研究者において意見の一致が見られている一方,中央銀行のバランスシート上の量(マネタリーベース)と質(非伝統的金融資産の保有)を政策変数とする非伝統的金融政策の効果を測定する計量的方法については意見の一致が全く見られていないのが現状である.その主な理由は,政策金利と中央銀行のバランスシート上の変数は政策アナウンスメント後の動きの形態が異なることに起因する.2019年は日本銀行とコロンビア大学に客員研究員として滞在しながら,現存する方法の問題を徹底的に洗い直した上で論文を数編作成し,新しい手法を日銀や海外の中央銀行関係者に提案することが出来た点が一番の収穫である. もう1つの研究課題は日本の銀行システムの歴史的な特殊性を見極める中で,あるべき金融行政を模索することにある.日本の銀行システムの特殊性は銀行と借入企業が時間をかけて関係性を成熟化させることで銀行の監視コストを下げていく点に求められる.日本以外の先進国の銀行システムにはこうした「関係特殊資産」としての銀行企業間の関係性は存在せず,したがって,日本では銀行企業間の関係性が一旦崩壊してしまうと,実物経済への影響は他国よりも深刻化してしまう.2000年代初頭の小泉竹中プランにおける性急な不良債権処理の過程で銀行企業間の関係性が崩壊し,そのことが日本経済の不況を大きくさせてしまったことの可能性を共同論文として数本作成した.そのうちの1つは,2020年3月に金融経済学のトップジャーナルであるJournal of Banking and Financeより掲載許可の連絡が来ており,近刊予定の状況にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下3つの研究カテゴリーにおいて論文を作成し,国内外で発表を行ってきた.1つ目のカテゴリーは,現金決済と電子マネーの利用および今後の中央銀行のあり方に関する論文として,「① Cash Usage Trends in Japan: Evidence Using Aggregate and Household Survey Data」を作成した.ブンデスバンクで発表され,ブンデスバンクの専門雑誌に公刊予定である.次に,非伝統的金融政策の因果効果を識別する論文として,「② Risk-Taking Channel of Unconventional Monetary Policies in Bank Lending」「③ Identifying Quantitative and Qualitative Monetary Policy Shocks」および「④ Credit Allocation and Real Effects of Negative Interest Rates」の3篇を作成し,日本銀行,コロンビア大学,カナダ中銀,CEBRAにて研究発表を行った.3つ目のカテゴリーとして,邦銀システムの特殊性やプルーデンスに関する論文を作成し,それは「⑤ The Time Has Come for Banks to Say Goodbye」「⑥ The Emergence of A Parallel World」「⑦ The Impacts of Strengthening Regulatory Surveillance」「⑧ The Interaction Effects in a Nonlinear Specification of Bank Lending」の4篇として結実した.論文⑤についてはJournal of Banking and Financeに公刊予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の【現在までの進捗状況】において記載された論文②,③,④,⑥,⑦,⑧を公刊すべく引き続き尽力していきたい.論文③,⑦,⑧については既に査読付きの専門誌に投稿をしており結果を待っている状況にある.論文②,④,⑥については,現在,改訂作業中にある.各論文ともに改訂課題が明確な状況にあるため,改訂をした上で,論文を査読付きの専門誌に投稿し,既に投稿済みの論文と併せて,何としても公刊をさせたいと考えている次第である.
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Causes of Carryover |
身内の不幸等が重なり体調不良が生じたため,十全に研究を実行できない状況が2019年後半以降に続いたことが主な理由である.現在,体調回復の途上にあり,研究を少しずつ再開させている状況にある.
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Research Products
(22 results)