2017 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking Cold War based on defense industrial base (aircraft and nuclear industry)
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17K03835
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂出 健 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (80272889)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核不拡散条約 / 原子力産業 / 航空機産業 / 国際提携 / 戦略的通商政策 / 日米原子力協定 / 冷戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷戦期における核不拡散レジームの形成と変容の分析の目的として、西側同盟内の防衛産業基盤(原子力産業・航空機産業)の国際提携に着目して研究した。研究実施計画に沿って、(1)べ核不拡散条約成立をめぐる英独蘭ウラン濃縮国際合弁(ウレンコ社)の設立過程をイギリス公文書史料に基づいて研究した、(2)1954年アメリカ原子力法成立過程、とくにその後のアメリカと諸外国の原子力協力協定の根拠となるセクション123について、米議会資料に基づいて検証した、(3)1988年日米原子力協定締結以降30年間の日本の核燃料サイクルの実施成果をプルトニウム・バランスの経済評価手法によりを検討し、30年間の協定満期後の日米原子力のあり方について政策課題を検討した、(4)1980年代以降の米欧民間航空機産業(米ボーイング社と欧州エアバス社)の競争と協調の関係について、政府補助金をめぐるWTOでの米欧摩擦に着目し、戦略的通商政策などの貿易理論を吟味しながら、検討した、(5)1970年代以降の日米の航空機産業の戦略的関係について、ロッキード社トライスター計画とYX/YXX計画(日本の次期旅客機開発計画)、日米FS-X摩擦(次期戦闘機開発計画)、リージョナル旅客機開発におけるMRJ計画(三菱リージョナルジェット)とボーイング社の提携関係について嫌疑希有した。また、上記のケーススタディに対する現代史理論的検討として、核不拡散レジームについての国際レジーム論の視座についての理論研究・冷戦史研究における冷戦終結期(1980年代)についての理論的研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にのっとって、以下の具体的な調査を行った。 (1)冷戦初期核管理構想の研究を、バルーク案(第二次大戦中のアメリカ民主党政権(ルーズベルト政権)の国連核管理案の調査を、各種文献を通じて行った。 (2)核不拡散レジームの成立過程を、国内大学図書館所蔵(立命館大学所蔵国家安全保障ファイル・核不拡散政策史料・京都大学所蔵国家安全保障史料などのマイクロ史料、アメリカ文書館のインターネット公開アーカイブスの調査・解析を通じて行った。並行して、イギリス国立公文書館所蔵の英独蘭核燃料国際合弁(ウレンコ社)について史料を整理した。 (3)原子力産業についての全般的・技術的・企業別調査のため、Nucleonics Week(国立国会図書館所蔵)、Nuclear Engineering(京都大学所蔵)、『原子力海外事情』『原子力産業新聞』の調査を行った。 全体として、文献(論文・図書)読解、業界紙誌調査、国内大学所蔵史料調査において、順調な進捗がみられた。海外文書館所蔵史料の調査については、当初の予想以上に、海外文書館史料の電子アーカイブ公開が進んでおり、これらの史料整理に時間を費やすことが合理的と判断し、実地調査は控えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、核不拡散レジームの歴史的調査について、初年度(平成29年度)に行った原子力産業・航空機産業における産業史的調査、西側各国の核不拡散政策についての概略的把握に基づき、海外文書館(アメリカ第二国立文書館(United States National Archives II, Maryland)、イギリス国立文書館(The National Archives, Kew)、ケンブリッジ大学チャーチル文書館)での現地調査を行う予定である。 また、核不拡散レジームの不安定化と再安定化の背景をさぐるために、1974年のインドの核実験後のアメリカ・カーター民主党政権のINFCE(国際核燃料評価)・レーガン共和党政権の原子力ルネサンス政策と1988年日米原子力協定の成立過程について調査を行う。また、並行して、防衛産業基盤の経済的評価について、バードンシェアリング論の吟味を通じて検証する。また、エジャトンの『戦争国家論』について、国際的視点から理論的拡張を行いたい。 また、初年度(平成29年度)・第2年度(平成30年度)に調査した史料・資料を基礎として、研究論文の国際査読誌への投稿・修正を行う。
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Causes of Carryover |
海外文書館調査(国外旅費)について、電子公開によって当初の調査予定資料のネットでの閲覧が可能となる文献があったため、初年度(平成29年度)は、電子公開資料の収集・整理・読解に充てた方が研究計画遂行上合理的と判断したため、資料収集は国内マイクロ資料調査に重点を置き、海外資料調査を行わなかった。これにより未使用となった予算は、第2年度(平成30年度)・第3年度において、海外調査を行う使用計画である。
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Research Products
(2 results)