2019 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Comparison of European (German) Railway System with East Asian (Japanese) one under the First Globalization - with respect to railway integration and technical development
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17K03837
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ばん澤 歩 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90238238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済史 / ドイツ史 / 鉄道史 / 経営史 / 工業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日欧比較経済史・経営史の視角により、経済・社会のグローバリゼーションが組織・制度の革新や技術開発にいかなる影響を与えるかという大きな問題を、鉄道業を対象に考察した。19世紀におけるドイツと日本とは、工業化の進度や世界経済における位置づけ、さらに政体形成にいたる経路 の大きな差にもかかわらず、グローバリゼーション下での「帝国」建設のなかでの鉄道業統合(「国有化」)と いう共通の課題をもった。両国鉄道の制度とその人的構成を実証的観察ならびに計量的経営分析によって比較し 、グローバリゼーションが経済組織に与える影響に関する知見を得ることが目的であった。 両国鉄道の制度とその人的構成を実証的観察によって比較することで、20世紀前半ま での国有化をめぐる経緯を比較した。すでに前々年度以来、成果は“A Comparison of Railway Nationalization between Two Empires: Germany and Japan”等にまとめたが、今年度については「第一次大戦後ドイツ鉄道業 におけるバイエ ル ン・グルー プ管理 局 (Glllppenverwdtung Bttcm)nO成立 (1919-1925年 )」『経済学論究』,Vo1 73,No.2,2019にまとめた。 また研究進行中、20世紀中半30-40年代のドイツ国鉄に関して集中的調査する必要が生じ、ライヒスバーンに関する経営史・企業者史研究をすすめた。その成果は『鉄道人とナチス』(国書刊行会,2018年)を経て、本年執筆公刊の『鉄道のドイツ史』(中公新書、2020)などに活用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間中、ドイツ・ベルリンならびにニュルンベルクを軸に複数の現地資料調査をおこない、想定した領域をカバーする資料を入手することができた(現地担当者の協力と現地史料館における資料収集の簡便化が幸いした面も大きい)。これにより、既に国際学会での報告をおこなっていた論稿についてさらに実証面で分析を積むことができ、英語論文として公刊に結び付けた。 また、研究期間の前後に派生した30-40年代ドイツ国鉄についての研究関心に対して実証的分析をおこなう資料の収集も進められた。それらの成果は上記の書籍に活用されている。しかしながら、それらの資料を用いたより専門的な論文の執筆については今後の課題として残されている。 また、日本鉄道についての比較に用いる資料の収集については、上に示した当初研究計画の若干の軌道修正により、やや遅れがあったものの、上記書籍執筆に伴う調査によって見通しを得ている 以上により、「概ね順調に進展している」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は日本における旧国鉄資料(詳しい所在の確認中)を収集・分析し、当初の目標であった日独鉄道比較の対象を1920年代から30・40年代に拡張し、戦時期鉄道業の比較をおこなうことで、日独比較経済史に貢献したい。 また、上記「現在までの進捗状況」にあるように、30・40年代(いわゆるナチス・ドイツ期)の鉄道業について、これまで研究の観点として必ずしも前面に押し出されていなかった鉄道従業員・鉄道技師に着目することで、一次史料・二次史料を拡充し、実証的分析を進めたい。これらを日独比較にまで拡張する方向を考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度には2回の史料調査のための海外(ドイツ)出張を計画していたが、今般の新型コロナウィルス伝染の影響により3月に予定した出張の中止(無期延期)を余儀なくされた。このため、当該年度の予算処理において、出張計画に使用予定の経費に未使用部分が残った。 現状、海外ならびに国内出張の自粛がどの程度の期間続くかは明瞭ではなく、延期された史料調査をいつ行えるかも確言できない状態だが、今後出張可能となり次第、計画遂行に補助金をあてたい。
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Research Products
(2 results)