2017 Fiscal Year Research-status Report
Comparative development of weaving districts in modern Japan
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17K03840
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋野 知子 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (30305411)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産地の形成と発展 / 日本経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主として①西陣産地の資料整理ならびにサーベイ、②同産地の長期的傾向の把握のためのインタビュー、③福井産地の長期的発展の要因を分析した論文の作成・投稿につとめた。 西陣産地については、『府県統計表』から把握可能な産地の動向を示す基本的指標(生産組織別機業数、職工数、生産額、力織機化率等)を系列化した。それらの変化から、19世紀終わり~20世紀前半の西陣産地を仮説的に3つの局面に分け、その背景で起こっていた産地内の変化をサーベイで得られた知見から明らかにしようと試みた。この局面的な変化を裏付けるために、『工場通覧』・『全国工場通覧』における複数年の個票データを集計した(平成30年度にはパネルデータを作成し、産地における「工場」にどのような変化がみられたのかを分析する予定である)。 同産地の長期的傾向を把握するために、元・機屋の関係者へのインタビューや資料収集を進め、「機械化できない製品の生産」や「大きい機屋ほど危機に弱かった」等、作業仮説を考える上で重要な意見を得た。また、現在の西陣織の新しい試みについてもインタビューを試みた。 福井産地については、福井産地の形成から羽二重生産の衰退までの要因を明らかにした'The rise and fall of industrialization and changing labor intensity: the case of an export-oriented silk weaving district in modern Japan'をOsaka Workshop on Economics of Institutions and Organizationsで報告し(平成29年7月21日)、経済学者・経済史家からの意見を仰ぐ機会を得た。本論文は、加筆・修正の上、英文学術雑誌に投稿し、現在も挑戦中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主たる理由は、以下の2点にある。1点は、データベース作りに時間がかかった点である。『工場通覧』等は、判別しにくい文字が多く、年数を経るとサンプルも増えるため、予想以上に時間を取られ、パネルデータの作成には至らなかった。 2点目は、西陣・桐生・福井でのインタビュー調査が予定通りに進まなかった点である。平成29年度は研究科の副教務委員長という立場にあり、インタビュー調査に行ける日数が限られてしまった。 また、国際経済史学会でのパネルのオーガナイズに関しては、フランス・スペインの織物業研究者との議論がまとまらず、絹織物業ではなく、織物業等在来産業の担い手であった女性労働(女性の労働参加率)を中心としたパネルをオーガナイズした。これについては、オーガナイザーとして全体の研究の包括やIntroductionの部分を担う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、①西陣のパネルデータの作成・分析ならびに産地の諸局面に関する研究を進め論文を作成すること、②福井産地の形成・発展に関する論文を国際学術雑誌に再投稿すること、③近代桐生における発展要因の整理を行うこと、④女性の労働参加率をサーベイし国際比較を行い、それを本研究における3産地と比較・検討することを目標とする。 ①については、これまでのサーベイも生かして論文を作成し、国内の経済史系の学術雑誌への投稿を目指す。②については、現在再投稿準備中でる。③については、化学染料の導入、力織機化を含め近代桐生産地における重要な発展要因を再検討する。④については、初期に目指したパネルとはテーマが異なってしまったが、女性労働・女性の労働参加率という観点から、本研究に生かせるようにできるだけ多くの地域・時代の文献にあたることとする。
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Causes of Carryover |
校務のため、インタビュー調査等の国内出張や海外出張が不可能だったため次年度使用額が発生した。今年度の資料収集・インタビュー調査とパネルデータ作成のための資料整理補助の謝金に支出する予定である。
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Research Products
(1 results)