2018 Fiscal Year Research-status Report
一次資料に基づく世襲財産制の実証研究ープロイセン・ザクセン・南ドイツの比較地域史
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17K03842
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 房雄 広島大学, 社会科学研究科, 名誉教授 (90104869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドイツ史 / 世襲財産 / 信託遺贈 / ドイツ語圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画調書記載の図書館調査については、主として、ドイツ「ベルリン図書館」(Staatsbibliothek zu Berlin)において、「ヨーロッパにおけるフィデイコミス=世襲財産の成立と展開ードイツ語圏を中心としてー」に関わる基礎文献の収集と資料化の作業を計三度行った。オーストリアのフィデイコミスの古典的文献であるイナマ-シュテルネグ(Inama-Sternegg)の1883年の論考、スイス史に関するフーバー(Huber)の重要論文、さらに、ポーランドとチェコスロヴァキアの問題をめぐるディーツェ(Dietze)の所説等を精読し、ノート化に努めた。 海外研修では、図書館での基礎作業だけでなく、専門家のレビューを受けることも必須の課題となるので、2017年にフランクフルトで出版した『プロイセンの世襲財産』(独文)の評価について、ベルリン自由大学のフィッシャー(W. Fischer)教授と討論した。上記の二図書館ならびに「ドイツ図書館」(Deutsche Nationalbibliothek)をはじめ、キール、エアフルト、ミュンスター等のドイツの主要図書館のみならず、イギリス、イタリア、スイス、オランダ、ポーランドのヨーロッパ各国、そして、イェール(Yale)大学等のアメリカを含む合計40以上の世界各地の図書館所蔵を確認できたことが、その成果だった。 研究成果として、「ドイツ語圏の世襲財産」と「ヨーロッパ信託遺贈制の基本問題」の二つの論考を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ドレスデンの「ザクセン図書館」(Saechsische Landesbibliothek)において、「ベルリン図書館」での前年度の文献調査を拡充する予定だったが、ザクセン史に関するフリーゼン(Friesen)の文献等の基礎資料については、その閲覧と資料化の作業を、すでに、平成29年11月のドレスデン研修の際に基本的に終えていたので、今年度は、次年度(令和元年)予定の課題、すなわち、南ドイツ、とりわけヴュルテンベルク(Wuerttemberg) の世襲財産を対象とする実証研究の準備に充てることができた。 令和元年は、レーゲンスブルク(Regensburg)において、トゥルン・ウント・タクシス(Thurn und Taxis)侯爵家に視点を絞った文書館調査を行う予定であるが、ベーリンガー(Behringer)の通史的研究に触れるとともに、プロイセンのポーゼン州に所在した同家の大世襲財産の一次資料の在りかを突き止めて、実証課題が具体化し、研究は、当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)の研究目的は、前年度同様、重要文献の閲覧と収集(図書館調査)、そして、未公刊一次資料の探索と解読(文書館調査)の二本柱の課題を中心とするが、今年度も前年度同様、次年度の課題を先取りするペースで仕事を進めることが、第一の推進方策である。さらに、単著『プロイセンの世襲財産』(2017年刊)に寄せられた内外からの様々なコメントを、レビュー同様、真摯に受け止めて活用しながら、本研究に直接関連する次の大きな中長期的テーマを具体化することが、第二の推進方策である。
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