2019 Fiscal Year Research-status Report
一次資料に基づく世襲財産制の実証研究ープロイセン・ザクセン・南ドイツの比較地域史
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17K03842
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 房雄 広島大学, 社会科学研究科, 名誉教授 (90104869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドイツ経済史 / 世襲財産 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画調書記載の図書館調査については、おもに、「ベルリン図書館」(Staatsbibliothek zu Berlin)とレーゲンスブルクの「トゥルン・ウント・タクシス侯爵図書館」(Fuerst Thurn und Taxis Zentralarchiv)において、ドイツ世襲財産問題関連の基礎文献の収集と資料化の作業を行った。先ず、前者では、L. Wegenerや W. von Hippel等の経済史関連重要文献を閲覧しつつ、「ドイツ人名辞典」(Neue Deutsche Biographie等)を使って、2020年3月発表した論考「ドイツ諸邦における世襲財産の廃止」を仕上げるため調査を行い、使用文献の拡充に努めた。Arenberg, Arenstorff, Croy, Fuerstenberg等の貴族家の基礎事実を知りえたことが成果であった。次に、後者においては、「タクシス家のクロトシン侯領」に関するケジェルスキー(R. Kedzierski)の未公刊学位論文を閲覧できたことが2019年度の大きな成果だった。文書館調査としては、レーゲンスブルクの当該文書館において、クロトシン侯領関係の貴重な原資料を発掘することができた。 海外研修では、上述の二系統の調査に加えて、専門家のレビューを受けることも課題の一つである。今年度は、「タクシス家文書館」館長のステューラ(P. Styra)博士の懇切なレビューにより、ケジェルスキーの事例分析等を知りえたことが有益であった。 研究成果として、広島大学経済論叢に、独文を含む三つの論考を公表するとともに、社会経済史学会中四国部会会報に「自著を語る」を寄稿した。さらに、未公表ではあるが、トゥルン・ウント・タクシス侯爵家の世襲財産をめぐる新しい論考を三本書き上げて、次年度以降の研究の展開に繋げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、トゥルン・ウント・タクシス侯爵家に視点を絞った、レーゲンスブルクの文書館調査を実現するとともに、ベルリンにおいても、より一般的な課題のための文献調査を幅広く行い、さらに、論考等の公表の点でも三つの成果を得て、研究は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究目的は、前年度同様、重要文献の閲覧と収集(図書館調査)そして、未公刊資料の解読(文書館調査)の二本柱を基本として維持するが、次年度は、特に、四年計画の最終年度に当たるので、ベルリン図書館での集中的な文献・史料検索と資料化を、第一の推進方策とする。さらに、当初の予定どおりベルリン研修を行えなかった場合に備えて、広島大学附属図書館における、できうる限りの代替的かつ補完的な資料調査を計画する。これが、第二の推進方策である。
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Causes of Carryover |
計2回の海外研修を遅滞なく計画どおりに実行し、所期の目的以上の成果を収めることができた。科学研究費を効率よく消化し、予定していた3回目の短期研修の必要が無くなり、相応の次年度使用額が生じた。2020年度の図書館調査(ミュンヘンとベルリン予定)に充当する予定である。
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