2021 Fiscal Year Research-status Report
一次資料に基づく世襲財産制の実証研究ープロイセン・ザクセン・南ドイツの比較地域史
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17K03842
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 房雄 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 名誉教授 (90104869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ大土地所有史 / 世襲財産 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画調書記載の図書館調査を含む海外研修については、ドイツの「ベルリン図書館」等において二度集中的に行うことを予定したが、新型コロナウィルスのパンデミックのため、前年2020年度同様、断念せざるをえなかった。現地での文書館・図書館調査に基づく実証研究には大きな困難を伴う状況が続くと強く危惧されたので、本2021年度は、研究成果の取りまとめに重点移動した前年度の課題を引き継ぎ、研究書の完成を主要目的とした。 当該研究開始後の三年間の進捗状況は、各年度の研究実施状況報告書に記載のとおり、「おおむね順調に進展し」、その結果、研究成果の取りまとめは、2019年度に初めて探訪したレーゲンスブルクの「トゥルン・ウント・タクシス侯爵中央文書館」(Fuerst Thurn und Taxis Zentralarchiv)所蔵の一次資料を基礎にした三つの論考に結実し、当初の想定以上の成果を得た。三論考は、1「ヴュルテンベルクのトゥルン・ウント・タクシス家とプロイセンのクロトシン侯領ードイツ世襲財産の一形態」(2020年11月)、2「第一次大戦期ドイツ・ポーランド関係における南ドイツ貴族のクロトシン侯領ー世襲財産廃止の特殊事例」(2021年3月)、そして、3「トゥルン・ウント・タクシス侯爵の家族史と世襲財産ー南ドイツの大土地所有者」(2021年3月)である。 一書の取りまとめは、上記三篇の成果を得たことによって、『ドイツ大土地所有史論』としての統一性と系統性の体裁を整えて、副題を「世襲財産問題の諸相」とする同書は、2021年9月3日、広島大学出版会による「出版可」の審査結果を、得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究開始時点の2017年に計画した「ドイツの文書館と図書館における原資料調査・解読の実証課題」は、第3年度の2019年5月、集中的に果たしたレーゲンスブルク研修によって、ひとまず基本的に終了した。コロナウィルスのパンデミックによってやむをえず大幅な変更を余儀なくされたものの、本研究計画は、前記「研究実績の概要」に記したとおり、所期の成果を得た。したがって、変更後に残された重要な課題は、以下の二点に集約される。第一点は、研究成果の総括と展望、そして第二が、文献・資料の拡充である。本年度は、この第一課題を果たすことに集中した。『ドイツ大土地所有史論ー世襲財産問題の諸相』が、広島大学出版会運営委員会の審査を経て、2021年9月出版可となったことにより、本研究課題は「おおむね順調に進展」した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、ドイツ現地での資料調査に匹敵する代替的な図書館調査を、日本で行うことである。研究代表者は、すでに、2013~2016年度の科学研究費基盤研究(C)「ドイツ農業とアメリカ金融資本の歴史的相関-未公刊一次資料に基づく実証的基礎研究」(課題番号25380428)の主要な成果も取り入れて、諸論考の集成を果たし、それは、『ドイツ大土地所有史論』(2022年度出版予定)に結実した。したがって。今年度は、残された第二の課題に集中的に取り組むことを推進方策とする。具体的には、一橋大学の「ギールケ文庫」図書室における文献調査を行う内地研修が、それである。
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Causes of Carryover |
2017年度から2019年度までの三年間は、当初の研究計画どおり、研究はおおむね順調に進み、本研究の根幹をなすドイツでの資料収集とレビューの受講も、計画を変更することなく実施することができた。だが、2020年度は、新型コロナウィルスのパンデミックのため、海外研修の中止を余儀なくされただけではなく、研究計画の根本的変更も行わざるをえなかった。急遽、推進方策の中心に据えた「研究の取りまとめ」の完成を目指して、2021年度は一年中当該の仕事に専念したため、資料・文献の系統的拡充を図る別箇の重要課題は、ほぼ全面的に手つかずのまま残るほかなかった。使用計画としては、少なくとも二回、一橋大学「ギールケ文庫」図書室における資料調査と文献複写に充てる予定である。なお、新刊の学術書については、厳選の上購入する。
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